11代王の中宗(チュンジョン)は自分が王になりたくてなったわけではない。それなのに、クーデターを成功させた高官たちは、いきなり中宗に「妻と離縁してください」と要請してきた。妻は中宗の即位にともなって端敬(タンギョン)王后になっていた。
高官の言いなりになった王
「なぜ別れなければならないのか」
中宗も腹が立って仕方がなかった。
高官たちは、なぜ王妃になったばかりの端敬王后を王宮から追い出そうとしたのだろうか。
実は、端敬王后は燕山君の正室の姪だったのである。また、端敬王后の実父は燕山君の側近でもあった。朴元宗たちは、燕山君派の巻き返しを恐れて、端敬王后をやり玉にあげたのである。
しかし、王であれば、臣下の要請をはねつければいいだけの話だ。それなのに、中宗は気が弱いというか、優柔不断というか、抵抗しながらも最後は認めてしまった。
結局、かつがれて王になった中宗は、クーデターを成功させた実力派の高官たちに頭が上がらなかった。
さらに情けないことに、中宗は妻を離縁したあとにメソメソしていた。彼は王宮で一番高い楼閣に立ち、端敬王后が住むあたりをながめてはため息ばかりついていた。それが都中に噂として広まり、端敬王后の耳にも入った。
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