韓国でユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の就任とともに国民に開放された青瓦台(大統領府)で、ファッション誌の撮影が行われたことが物議を醸している。韓国政府は「権力の象徴」だった青瓦台を「息づく空間」へと転換させるため開放に踏み切ったが、今回、ファッション誌の撮影舞台として使われたことに、「国の品格を下げる行為」として批判も出ている。
青瓦台をめぐっては、先の大統領選で、ムン・ジェイン(文在寅)前政権の「密室政治」を批判したユン・ソギョル(尹錫悦)現大統領が、国民との距離を縮めたいと「青瓦台を国民にお返しする」と宣言。尹氏の大統領就任式に合わせ、市民に開放された。1948年の政権樹立以来続いてきた権威主義的な「青瓦台時代」を終わらせたことは、韓国現代史における大きな転換点となったと評価する声も上がっている。
一般開放されて以降、連日、多くの観覧者が訪れ、開放43日目となる6月22日に100万人を突破した。文化財庁の青瓦台国民開放推進団が先月発表した調査結果では、青瓦台の観覧者のうち89.1%が観覧に満足していることが分かった。最も満足した点としては、「青瓦台内の散策と景観の観賞」(61.8%)、「本館や迎賓館など室内の観覧」(28.3%)などが挙がった。青瓦台を観覧した理由を複数回答で尋ねたところ「大統領の執務空間に対する興味・関心から」が36.9%で最も多く、「初めて一般に公開される空間だから」が29%で続いた。また、青瓦台の活用・管理方向としては「大統領の人生と歴史が息づく現在の姿をそのまま保存してほしい」が40.9%で最も多かった。
文化体育観光部(部は省に相当)は青瓦台の今後の活用計画を策定中で、本館と官邸は現在のまま保存し、青瓦台が所蔵する600点余りに上る芸術作品の展示スペースとして活用する案などが検討されている。
こうした中、今月22日、青瓦台でファッション誌「VOGUE(ボーグ)」の撮影が行われた。モデル5人が民族衣装の韓服をモチーフにしたドレスなどを着て、青瓦台の本館や迎賓館などで撮影に臨んだ。モデルの一人は派手なピンクのドレスを着て、椅子の上に横たわるポーズを取った。迎賓館の宴会場では5人全員が一緒にカメラに収まった。
今回の撮影は文化財庁とVOGUEのコラボによるもので、同庁の「文化遺産訪問キャンペーン」の一環。文化財庁の関係者は「文化遺産への関心が、実際に現地への訪問につながるようにするため、VOGUEとのコラボレーションを企画した」と説明している。
VOGUEは22日、公式ホームページを通じて、撮影した写真を公開した。しかし、青瓦台がファッション雑誌の撮影場所として使われたことに、ネット上では賛否が分かれている。「大統領府が撮影セットか?このまま行けば大統領府でドラマを撮るようになるぞ」「国家の品格が落ちる」「国の中心だった場所を単純に見物スポットにようにしているのを見ると、かつて日帝がチャンキョングン(昌慶宮)を見物場所にした蛮行を思い出す」などと批判の声が上がった。
(2ページに続く)