作曲家、坂本龍一氏の曲の盗作疑惑で物議を醸した韓国の歌手兼作曲家、ユ・ヒヨル氏が18日、自身が司会を務めている音楽番組を降板すると発表した。ユ氏は「番組や制作陣への影響を小さくするため、今週の収録を最後にしようと思う。これ以上、被害が及ばぬよう最善を尽くし、残された責任を果たしていく」とコメントした。しかし、今なおユ氏に向けられた疑惑は晴れていない。
ユ氏をめぐっては先月、アルバム「生活音楽」(原題)の収録曲「とても私的な夜」が坂本氏の「Aqua」が類似しているとの指摘があり、所属事務所の「アンテナ」が盗作の事実を認め、謝罪した。ユ氏は昨年8月から「ユ・ヒヨルの生活音楽」と題したプロジェクトを行っており、ユ氏は同プロジェクトを通じて、日常の中で気軽に聞ける音楽を披露。プロジェクトの一環で発表した「生活音楽」は先月、発売を予定していた。
疑惑を受け、ユ氏は「(坂本氏が)長年にわたり最も影響を受け、尊敬しているミュージシャンなので、無意識のうちに私の記憶の中に残っていた。発表時は、私の純粋な創作物と考えていたが、類似性は認めざるを得ない」と釈明。「十分に確かめず、多くの方々を失望させたことに対して謝罪の言葉を申し上げる。何よりも坂本龍一先生とファンの方々を不愉快にさせてしまったことに対しておわび申し上げる」と謝罪した。
ユ氏はソウル大学作曲科在学中の1992年に「ユ・ジェハ歌謡コンクール大賞」で大賞を受賞しデビュー。イ・ムンセ氏やユン・ジョンシン氏ら、著名歌手のアルバムをプロデュースする中でその名が知られるようになり、1994年にユン・ジョンオ氏とプロジェクトユニット「TOY」を結成。その後、軍隊入隊でしばらく活動を休止するが、除隊後、ヒット曲を連発させた。壮大でクラシカルな要素と、アコースティックなバラードが感じさせるセンチメンタルな要素がベースとなったTOYの音楽は、今なお高い人気を集めている。また、音楽やバラエティー番組にも出演してきた。
騒動直後に坂本氏もコメントを発表。「両曲に類似性はあるが、私の作品『Aqua』を保護するための何らかの法的措置が必要な水準だとは思えない。そして、私の楽曲に対する同氏の大きな尊敬の念を知ることができた」とし、特段問題視しない考えを示した。
しかし、盗作疑惑は他のアーティストの曲にも及び、MBCのバラエティー番組の楽曲「Please Don’t Go My Girl」が、米国のグループ「Public Announcement」の曲「Body Bumpin」に似ているとの指摘や、ユ氏が作詞・作曲・編曲を担当した「Happy Birthday to You」がミュージシャン、玉置浩二氏の同名曲に似ているとの指摘も出され、ユ氏への批判はさらに高まった。
ユ氏の所属事務所「アンテナ」は18日、ユ氏が13年3か月にわたり司会を務めてきたKBS2
の音楽番組「ユ・ヒヨルのスケッチブック」を降板すると発表した。ユ氏は騒動後も番組に出演したが、視聴者掲示板には批判や降板を求めるコメントが相次ぎ、掲示板が閉鎖する事態となった。
番組降板を決めたユ氏は所属事務所を通じコメントを発表。「長い間、私に関する騒動でご迷惑をおかけし、改めてお詫び申し上げる」と謝罪した上で、「『音楽を楽しむ時間が否定されたようだ』という声が一番胸が痛かった。皆さんの喪失感がどれほど大きいか、計り知れない」とした。また、「今、提起されている盗作疑惑には認めがたい部分もある」としながらも「こうした議論が再び生じないよう、自身にもっと厳しくなろうと思う」と胸の内を明かした。視聴者や番組に向けては「13年3か月という長い間、応援してくださった多くの方々に心より感謝する。最後まで頑張って下さった制作陣と関係者の皆さんに心より感謝する」とした。
また、ユ氏はJTBCのバラエティー番組「ニューフェスタ」からも退く。同番組は先月7日に放送が始まったばかりで、ユ氏は企画者兼プロデューサーを務めていた。
ユ氏をめぐる疑惑にとどまらず、韓国では日本の作品を盗用したとみられる作品が多く見られる。一昨年、韓国のゲーム会社が日本の人気漫画「鬼滅の刃(やいば)」のキャラクターに類似したゲーム「鬼殺の剣」を発表。しかし、「パクリ疑惑」が浮上し、アプリのダウンロード開始からわずか6日でサービスを終了した。
今年5月には、韓国のインターネットサービス会社NAVER(ネイバー)が立ち上げたNAVERウェブトゥーンに発表された漫画が、かつて集英社の「週刊少年ジャンプ」で連載されていた藤本タツキ氏作の「チェンソーマン」を盗作したものではないかとの疑惑が浮上。NAVERウェブトゥーンが連載を中断する事態となった。
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