王室の図書館
政争のせいで常に命の危険にさらされていた正祖は、寝る時間を少なくして自らの身を守ろうとした。
読書は起きているための手段でもあった。
1776年に即位したのだが、そのあとで暗殺団が王宮に忍び込んでくることもあった。これは、国家として尋常な姿ではなかった。政権内部がいかに混乱しているかを象徴するような事態とも言えた。
「なんとしても改革を実行しなければならない。そうでなければ、政争に明け暮れている間に王朝が崩壊してしまう」
危機感をもった正祖は、大胆な改革に乗り出した。
彼がめざしたのは、政争とは無縁の勢力を育成することだった。その際に新しい拠点となったのが奎章閣(キュジャンガク)である。
この奎章閣は表向きに「王室の図書館」という位置づけだった。各種の図書を保管して重要な書籍の編集をする場として公には認知された。そのほうが、政敵の連中から目をそらすことが可能だった。
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『イ・サン』が描いた英祖と思悼世子の悲劇とは?/時代劇特選1