韓国で酒といえば、焼酎である。韓国の地方をまわっていて食堂に入るとみんな焼酎を飲んでいる、ということがよくあった。それほど、食堂でビールを飲んでいる人が少なかった。
マッコリと焼酎の違い
私はビールを頼むのだが、食堂に置いていないこともあったりして、店のアジュンマ(おばさん)があわてて外に買いに行っていた。それほど、地方の食堂でビールを飲むというのはポピュラーではなかったのだ。今では、ビールを飲む人が少しずつ増えてきているのだが……。
まだ貧しかった1960年代を描いた韓国ドラマを見ていると、出てくる男たちはこぞってマッコリを飲んでいる。当時は「酒といえばマッコリ」だったことが、ドラマを通してわかってくる。
ただし、今、ソウルでマッコリを飲んでいる人は多くない。「マッコリは貧しかった時代の安酒」というイメージがあるせいか、見栄っ張りの韓国人はマッコリより焼酎を好む傾向がある。
その飲み方にもしきたりがある。お湯や水で割らない、継ぎ足しはしない、女性はお酌をしない……などである。
また、酒の飲み方にも「長幼の序」が出る。
韓国では、年下が年上の前で酒を飲むときには、顔をそむけたりしている。
失礼では?
そう考えるのは日本的すぎる。
韓国の慣習では、年下が年上の前で酒を飲むのは生意気なので、失礼がないように横を向きながらコッソリ飲むのである。
ただし、ずっとそれをやられては、年上も落ちついて飲めない。
「横を向かなくていいよ」
そう年上が年下を促したり、逆に年下が年上に向かって「横を向かなくていいですか」と断ったりしている。
こんなやりとりこそ、日本から見たら「面倒くさい」と思うかもしれない。
酒の勘定でも割り勘はほとんどない。
結局は誰かがまとめて払うことになる。
この場合、払う人は暗黙の了解で決まっている。かならず年長者が率先して払うわけではない。
たとえば、「誘った人」「肩書が上の人」「お金を持っている人」「今日は絶対に払いたいと思っている人」「やっぱり年上の人」などが払う立場になる。
ただ、若者の間では、合理的なやり方だとして割り勘が見られるようになってきたのだが……。
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