バンドがソン・シギョンの代表曲メドレーを奏でる中、ステージ上のスクリーンには満開の桜、そして真夏の南国の島、色鮮やかな紅葉がゆっくりと映し出される。そして、最後はコンサートのタイトルでもある冬、一面の銀世界。
「Winter Wonderland」の軽快なイントロとともに、温かそうなダークカラーのセーターに身を包んだソン・シギョンが登場すると、会場は大きな歓声に包まれ、パープルのペンライトが大きく揺れた。
東京・渋谷公会堂で1月25日(日)、「ソン・シギョン2015 Concert in JAPAN ~冬~」が開催された。昨年ソウルでスタートしたソン・シギョンのツアーのラストを飾る千秋楽。
「君の全ての瞬間」を胸に手をあてて、情感たっぷりに歌い終えたソン・シギョンは、「冬になるたびに日本に来ます。みなさんのほほえみに支えられ、ツアーの最終日を無事に迎えることができました。今日はどの冬の夜よりも温かい時間をつくりたいと思います」と日本語であいさつ。
「ふーっ」とセクシーなため息のあと、「ならいいのに」をファンと声を合わせて歌い、会場はぐっとヒートアップ。
歌の間にスクリーンに流れた映像のテーマは、「冬と別れ」。
「君が『ごめんね』と言ったとき、僕が『行くな』と言っていたら、この冬は今よりも温かかったのかな」と恋人と別れた男性の切ない心境のモノローグが流れた。
そして、スポットライトに照らされて浮かぶ、スーツ姿のソン・シギョン。
「僕のそばを離れないで」、「どうしても…」、玉置浩二の「Melody」とラブバラードを続けてしっとりと聴かせた。
そして「みんなが好きな人を紹介します!」と、おなじみの通訳ユさんが登場。
「40代に近づいて、高音がつらくなりました(笑)」とジョークを飛ばし、「別れの歌ばかり歌っていますが、50代になったときに『もう一度さよなら』を歌ったら、寂しすぎて大変ですよね!(笑)」と、ソン・シギョンのトークもなめらかにパワーアップ!
玉置浩二とは一緒にお酒を飲んだこともあり、「急にギターを手に取って歌い出した玉置さんは、男性の僕が見てもセクシーでした」と、エピソードを明かした。
次に流れた映像には、バラエティ番組「アブノーマル対談」で共演しているCross Geneのタクヤも登場。
タクヤがネットで自分の評判を検索しているのを斜に構えて見ていたソン・シギョンが、実は自分も夜中にネットで自分の名前を検索し、ニッコリしたり、ちょっぴりムッとしたり。さらに友人を飲みに誘おうとしても、みんな家庭があって急には出かけられず、シングルのソン・シギョンは一人服を着たままシャワーを浴び、ビールを飲む……というコミカルなドラマ仕立てに、観客も大爆笑!
ここからは歌も一転して明るい曲に。笑顔で「あぁ僕の女神様」を、ファンと声を合わせながら歌った。
「キャロルを集めたアルバムを作るのが夢だったんです」と明かすソン・シギョンが昨年12月にリリースした「Winter Wonderland」は、ほぼすべて英語の曲だ。その中で唯一韓国語の曲「忘れないでいて」を、コーラスメンバーの女性シンガーとデュエット。「緊張します……」と恥ずかしそうに自己紹介しながらも、力強い声で歌った女性シンガーに、大きな拍手が送られた。
「2015年私が聞きたい言葉」のコーナーでは、ファンから集めたエッセイを紹介。ソン・シギョンのファンだった妻に誘われてコンサートに行くうちに、すっかりファンになったという夫の話を紹介したあと、会場に来ていた夫妻とトーク。
APinkのファンだという夫と意気投合したソン・シギョンは、「僕は、APinkみたいにかわいくなくてゴメンナサイ……」と苦笑いして、ファンの笑いを誘った。
また、「好きな人を一人に決められない」と綴っていたのは、なんと9歳の女の子。
ソン・シギョンは、小さな相談者のかわいらしい悩みにちょっと戸惑いながらも、「まだ、ぜんぜん大丈夫だよ。いつか、だれも自分のことを好きじゃなくなる時期もあるし(笑)。今が幸せだけど、もてあそんではいけません」と真摯に答えていた。
そして、スクリーンの映像は、「あいつが帰ってきた」という突然ハードボイルドな映画のような世界に。ファンに新しい姿を見せようと変化を模索するソン・シギョン。そして、「はじめて挑戦するジャンル、それはまさに……」と紹介されたのは、なんと「HIP POP」!
ラッパー姿のソン・シギョンがスクリーンに映し出されると、会場からは「えーっ!」という喜び混じりの絶叫が。そして、Tシャツにキャップをかぶったソン・シギョンがステージすると、ファンは総立ちとなった。曲はDragon Ashの「Grateful Days」、そしてPSYの「Passionate Goodbye」。
通訳のユさんもラッパー姿でノリノリに。
アップテンポの「微笑天使」まで一気に盛り上げ、大きく息をついたあと、「これが最後の曲です」と言うと、会場からは「エー!」と別れを惜しむ声があがった。ラストの曲は、「君は感動だった」。得意のハイトーンを響かせると、ファンからは、大きな拍手が送られた。
鳴り止まぬ拍手の中、すぐにアンコールがスタート。
「おかげさまで温かくなりました」と上気した笑顔で再びステージに登場したソン・シギョン。
「Let it snow」と、「僕に来る道」を歌いながら、観客席をゆっくりと、両手を高く挙げて観客席のサイドや2階にも感謝の気持ちを送った。
「デビューから15年。ステージに立ってみなさんとお会いするこの瞬間が一番幸せと言うことに変わりありません」と語ったソン・シギョン。新しい姿に挑戦し続けるバラードの貴公子との充実した3時間に、ファンの心もほっこりと温かくなった。
取材:Korepo(KOREAREPORT INC)
写真提供:©Jellyfish entertainment