時代劇の傑作といえば、取り上げる人が多いのは『宮廷女官 チャングムの誓い』だ。このドラマには11代王・中宗(チュンジョン)の食事のシーンがよく出てきた。食膳は超豪華で、料理がズラリと並ぶのが通例だった。食べきれないのに、なぜあんなに多くの品数を出していたのだろうか?
残した料理はどうする?
国王の食膳は本当に豪華だったが、あの料理の数々は決して「食べるため」のものではなかった。
実は、「見るため」のものだったのだ。というのは、国王の食膳は「食品の見本市」にする役割があったからだ。
そうした食膳を見て、国王は全国の食料事情がどのようになっているのかを察することができた。
仮に、夏にもかかわらず旬のキュウリが欠けていれば、それはキュウリの収穫に大きな問題が起こっていることを暗示していた。国王はすぐに「キュウリの生産状況を調べるように!」という命令を出したのである。
このように、国王の食膳は農産物の収穫状況を把握するためのものだったので、歴代王はガツガツ食べるようなことはしなかった。
もちろん、料理が大量に残る。
しかし、無駄ではなかった。
なぜならば、国王が残した多くの料理は、調理した女官たちが食べるしきたりになっていたからだ。
このときばかりは、女官たちも垂涎の美味をたっぷりと堪能することができた。
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