『オクニョ 運命の女(ひと)』は16世紀中盤の朝鮮王朝を描いた時代劇だった。登場人物の中で実在したのは文定(ムンジョン)王后、尹元衡(ユン・ウォニョン)、鄭蘭貞(チョン・ナンジョン)、明宗(ミョンジョン)など。この中で明宗を除く3人は歴史上で記録されるほどの悪人だった。
政治腐敗の元凶
『オクニョ』に登場する3人の悪人を見てみよう。
まずは文定王后だ。
彼女は11代王・中宗(チュンジョン)の三番目の王妃である。
中宗には二番目の王妃が産んだ世子(セジャ/王の後継者)がいて、そのまま12代王・仁宗(インジョン)として即位した。しかし、1545年に文定王后は仁宗を毒殺した疑いが強い。
自分がお腹を痛めて産んだ明宗を王にするためである。その際に、手先として動いたのが鄭蘭貞だった。
彼女は「朝鮮王朝三大悪女」の1人に数えられているが、あくまでも文定王后の手先として動いたのであり、巨悪はむしろ文定王后であった。
朝鮮王朝時代、幼い王を補佐するという名目で女帝のように振る舞った王妃が何人もいるが、その中でも一番悪政を行なって民衆を困らせたのが文定王后だ。
1550年代は飢饉が続いて餓死する人も多く出ていた。
それほど過酷な時代だったのに、文定王后は実権を持ちながら庶民を救済する対策を取らず、身内で高官を独占して政治を腐敗させた。
まさに「悪の女帝」と言っていい。
この文定王后の弟が尹元衡だ。
姉が王妃ということで出世を果たし、悪政の実行役となった。
姉が姉なら弟も弟で、こういう悪人に統治されたのだから、朝鮮王朝の1550年代は不幸であった。
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