「コラム」日韓の二千年の歴史12/近江の石塔寺

小さな石仏が並んでいる

 

三重の塔
石塔寺は、近江鉄道の桜川駅から徒歩で40分ほどの距離にあった。
入り口には長い石段が見えている。石段の右側に山門があり、その奥が本殿になっているのだが、まず石段を上っていった。
158段の石段を上がると、巨石を積み上げた三重の塔が見えた。そのまわりは、おびただしい数の小さな石仏が囲んでいた。

三重の石塔を構成している巨石は、そこいらに転がっているようなものではなく、特別な地で産出されたものであろう。そんな選りすぐりの巨石を山の上に運ぶのは、今でも難儀するはずで、古代の一時期となれば、国家事業に匹敵するほど大変なことではなかったのか。
何のために、そこの巨石を運ぶ必要があったのか。
仮に、近江の地に渡来人が数多く住み、この広い平野部を耕作に適した農地に変えていったとすれば、その功労者を祀ったものかもしれない。

ただ、この石塔の積み上げ方は、日本ではあまり見られないものであり、むしろ韓国で、これと似たようなものをいくつか見たことがある。
朝鮮半島では、もともと巨石を積み上げて慰霊の場所としたり願いごとをしたりする風潮がある。
実際、今の韓国でも石を積み上げた場所を神聖視している。
それは、古くから朝鮮半島に根付いた土着的な習慣なのだが、この石塔寺の三重の塔も、そんな役割を持っていたのではないかと推定される。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

コラム提供:ロコレ
http://syukakusha.com/

 

康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化と、韓流および日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『悪女たちの朝鮮王朝』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』。

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