早世した2人の息子
世宗時代からの忠臣の間では、端宗の復位を狙う動きが起こった。
しかし、世祖はこの動きを力づくで抑えつけた。その際には、むごたらしい血が数多く流された。
端宗が生きていては安心できない、と感じた世祖は、端宗を流刑にしたうえで死薬を与えて殺した。
端宗はまだ16歳だった。
聖君と崇められる世宗の二男が、これほどの非道を繰り返したのだ。王位継承をめぐる王族の争いは、初期の朝鮮王朝の汚点だった。
世祖の治世は1468年まで13年間続いた。
彼は王朝の基本法典の制定に功績があり、王権の強化という面でも実力を発揮した。
しかし、晩年の世祖は妄想に苦しめられたという。長男が19歳で夭逝したことも世祖にとって痛手だった。ちなみに、世祖の後を継いで8代王になった二男も19歳の若さで亡くなっている。
「息子が2人とも早死にしている。祟(たた)りだ!」
庶民たちはそう言った。
後世から見れば、世祖は評判の悪い王であった。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
コラム提供:ロコレ
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世祖について紹介している『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』(康熙奉〔カン・ヒボン〕著/実業之日本社)
康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化と、韓流および日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『悪女たちの朝鮮王朝』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』。