同じ空の下で生きられない
綾陽君は仁穆王后の懇願を受け入れるわけにはいかなかった。クーデターで追放したとはいえ、先の王を斬首できるわけがない。
仁穆王后は綾陽君に言った。
「即位して私の意をくんでくれるのならば、私のために復讐するのが孝行というものではないですか」
「このように部下たちがいるのに、私がどうやって思いどおりに振る舞うことができるでしょうか」
「なぜ、部下たちの指示に従う必要があるのですか。父母の仇とは同じ空の下で生きることはできないし、兄弟の仇とは同じ国で生きることはできないのです。逆魁が自分で母子の道理を破り、私にはかならず晴らさなければならない怨みがあり、これだけは絶対に譲ることができない」
仁穆王后は強硬だった。彼女は、執拗に光海君の斬首を主張した。しかし、廃位にした王をさらし首にすることだけは、綾陽君も絶対にできなかった。
結局、綾陽君は仁祖として即位した後も、光海君の斬首を認めなかった。仁穆王后は積年の怨みを完全な形で晴らすことはできなかったのだ。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
コラム提供:ヨブル
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