「ジアンとジス、誰に傾いてもいけないと思いました。綱渡りをする気分といいますかね。でも監督に『(ソヌ・ヒョクの気持ちが)分からなければ、分からないままにやってみなさい』って言われたんです。ヒョク自身も自分の気持ちが分からない状態なのだと言いながら。話を聞いたら、あまりにも自分が先走って知ろうとしていたのではないかという思いになりました。それ以降、ある程度は負担を感じなくなりました」
海苔の養殖場で働いていたジアンを探し出し、彼女を慰め、説得したエピソードは、イ・テファンにとって特別だ。一番辛かった撮影だったからである。彼は「混乱しました。現場では何も聞こえなかったです。自分が何を言っているのかも分からない位でした」と話した。彼を支えてくれたのは、作品を演出したキム・ヒョンソク監督と同僚俳優たちだったという。キム監督は、イ・テファンにずっとヒョクの状態を説明し、シン・ヘソンはジアンの立場から自身の感情を話してくれた。イ・テファンは「僕にとっては息の詰まるようなエピソードでした。でも、撮影が終わってから、一段階演技面で成長したように感じられました」と話した。
ソヌ・ヒョクは端正な事業家で、簡単に理性を失わない性格である。ジアンとジスが危機に陥ればいつでも現れて助けてくれる「足長おじさん」だ。完璧な人物のように見えるソヌ・ヒョクだが、誰よりも近くで彼と共感していたイ・テファンは彼からある欠陥を発見したという。
「ヒョクは高校時代に母親を亡くし、早くから家長となりました。きつい仕事をしながら今の場所まで来ました。理性的で好き嫌いがはっきりしている性格ですが、僕はそれが幼い頃からの環境のせいで作られた性格だと思いました。ヒョクは個人的な要求を我慢するために、自分の本来の姿を消してしまっているようでした。でもジスは自由奔放な性格で、正直ですよね。ヒョクの小さな行動や言葉までも大切に考えてくれて。そんなジスに出会いながら、ヒョクも成長したのだと思います。自分がなぜ寂しくて、何を必要としているのか見つけながらです」
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