<Wコラム>「EXO」KRIS訴訟、カマキリと卵、だんご3兄弟

<Wコラム>「EXO」KRIS訴訟、カマキリと卵、だんご3兄弟

先日、所属事務所の「SMエンタテインメント」を相手に専属契約の解除を求める裁判を起こしたことで話題をさらっているK-POP界の人気アイドルグループ「EXO」のKRIS(クリス)。中国系のカナダ人で、本名は「ウー・イー・ファン」である。

16日には「中国のツイッター」と言われるSNS「ウェイボ」で、直筆の手紙を掲載したことが注目を浴びている。

手紙には、 「『螳螂拒轍』、私は元気にしている。みんなの幸せと発展を願っている。私を支えてくれるすべての方とご意見に感謝している。『ウー・イー・ファン』はいつもここにいるよ。」と書いてあった。

問題発生直後には、「EXO」のSUHOやTAOから「非常に当惑している。訴訟を取り下げて謝罪せよ。」などの厳しいコメントが向けられていたが、これを無視するような形で今回の手書きコメントが公開された。

なお、「螳螂拒轍」とは、漢字文化圏である日中韓に共通する四字熟語で、「カマキリが車を阻む」という意味。つまり、自分の身の程も知らずに強敵に向かう無謀さを諭す言葉だ。

自分を弱者または被害者だと主張したいKRIS本人の気持ちが、この4文字に現れている。

そして、この直筆コメントには8万を超える現地ファンからの書き込みがあり、今回の訴訟問題は「『EXO』KRISの中国ファン」対「その他の『EXO』11名の日中韓ファン」の論争にまで発展しそうな兆しを見せている。
既に、「EXO」のほとんどのメンバーは「Twitter」(ツイッター)でKRISをアンフォローしているようだ。

また、一部の関係者たちからは、「韓中両国間の文化交流にも悪影響を及ぼす恐れがある」などと指摘されており、KRIS側が中国内の「韓流反対勢力」に便乗する可能性も否定できないとしている。

KRISの支持勢力は、「EXO-M」の中華圏における活動で獲得したファンがほとんど。実際にも中国のSNS経由で中国語でしかコメントを残していない上、韓国のファンを意識した内容はあまり見当たらない。
中国国内でも彼の突然の提訴行為に賛否両論が沸いているようだが、現在KRISは自身の支持勢力を結集させながら、世論を味方につけることに注力していると伝えられている。

日中韓には「螳螂拒轍」の他に、「卵で岩を割る」という、似たような格言もあるが、過去に卵で岩が割れてしまったことが何度も起きたことから、KRIS側も堂々と自身を見せているのかもしれない。

K-POPの本山とも言われている「SMエンタテインメント」は確かに「岩」である。「東方神起の悲劇」に続く「JYJ」所属事務所との法廷攻防戦、「SUPER JUNIOR」の中国人メンバーだったハンギョンとの裁判沙汰など、今回の訴訟問題と酷似している事件が繰り返される度に、SMは「岩」、所属芸能人は「卵」に喩えられた。しかし、その結果は、原告(芸能人側)の勝訴または、反訴後の和解で芸能人側の訴えの趣旨が認められた形になっている。

ただ、今回は、「複数の中国人を起用し現地を拠点にして活動していたこと」と、「デビュー後3年も経過していない」ことなどから、過去と同じような展開になるという保障はない。しかも、KRISと「SMエンタテインメント」との契約は、過去に「奴隷契約」とも言われた契約とは違うようだ。「奴隷契約」が社会問題化した直後、韓国政府は素早く「標準契約書」を作り上げていた。そして、芸能事務所と芸能人との間の契約は、この「標準契約書」を基にするようにしてきたからだ。

既に「EXO」に愛想を尽かしているKRISが今後中国でどのような活動に出るかは予測できないが、ハンギョンに続き彼まで早々と独立に成功してしまえば、 「K-POPアイドルとして認知度を上げてから中国全土でブレイク!」という妙な図式が成り立つかもしれない。

日本や中国の音楽マーケットも視野に入れ、最近ではその規模感にふさわしいレベルまでクオリティーを上げながら投資と人材育成を拡大してきたK-POP界。今後も中国系人材を取り込み、中華圏での影響を強めたい韓国の業界関係者たちは、訴訟問題に対する中国本土からの反応にも神経を尖らせている。

日韓問題とは見方が変わってくるが、韓国と中国の間には、同じくらい複雑な中韓両国の歴史認識や外交問題がある。韓国の最南端の島、済州の南海域の岩礁に対する領土問題も潜在している。

くれぐれも「レイシズム」(人種差別主義)や「ナショナリズム」(民族主義)に発展しないことを祈る。兄弟喧嘩ほど醜いものはない。

日中韓は、その中ではあまり感じていないかもしれないが、漢字や儒教や仏教など、醤油や味噌やご飯など、箸やお茶やラーメンなど、様々な文化を数千年間も共有してきた、世界でも稀な三兄弟なのだ。

そういえば、あの「だんご3兄弟」の流行からは、もう15年が過ぎた。時間は早いもので、人生は短い。のんきに喧嘩なんかしている場合ではない。

2014.05.18

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