「コラム」韓国の文学、あなたは本当に「韓国」を知っている?

最近では韓国でも村上春樹作品のような純文学が若者に読まれベストセラーになっていますが、今もなお先ほどの重い概念が反映されていないストーリー展開は小説扱いされません。韓国人は「大河小説」、「大河ドラマ」が大好きです。

ある日本の作家が、日本の小説のテーマは「愛」で韓国は「政治」だと、どこかで書いているのを読んだことがありますが、なるほどとうなずきました。日本の場合は、人間の感情の機微を扱い、個人史的なものが多い反面、韓国では権力闘争や、国や民族の行末などの重いテーマが主流です。韓国ドラマで百話を超えるのがザラだということからも、おわかりいただけるかと思います。十、二十話では祖国、民族というテーマを扱えないばかりか、権力闘争も満足に描けません。個人を扱ったものでも、心理描写よりいかに困難を克服するかのサクセスストーリーに重きが置かれます。小説、ドラマから見ても日本人と韓国人の関心が違うことがおわかりいただけるでしょう。

「鶏が先か卵が先か」はわかりませんが、ドラマや小説の影響か、元々の関心がそうなのか、韓国人は理屈っぽく唾を飛ばし、祖国・民族を熱く語り、議論で負けることを嫌います。日本の皆さんは、どちらかといえば身近な話題を静かにつつましやかに話します。議論してらちがあくなら取り組むけど、手に負えない大きな話題は避けるべきだと考えているように見えます。言い換えるなら、「ディテール」、「心理描写」や「雑学」に強いのが日本で、ムラがあって大きなテーマを論じたがるのが韓国の特徴と言えるでしょうが、最近この概念も変化しつつあるので次の記事を紹介します。

大河小説の大家である趙廷來氏の最近のヒット作品『ジャングル万里』(今日の中国を描いたベストセラー)を紹介する韓国の雑誌『月刊中央』の記事に彼の文学観が伺えます。多少長くなりますが引用します。

「作家趙廷來チョ・ジョンレは平素作品の〈形式〉より〈内容〉を追及する。〈どのように書くか〉より〈何を書くか〉を悩む作家である。最近〈村上春樹を読みながら作家を目指した若い作家を一喝〉したのも〈何を書くべきか〉を思い悩むリアリストの反応だと言える。

最近韓国の小説が共同体の運命を扱わず小さな自我の探求の沼にはまっているのも彼の心配の種になっている。

人間はひとりで生きていけなく、互いに関係を結ぶ存在であり、その関係が複雑にからむのが社会であり、その中で展開される問題の物語を形象化するのが彼の作品論である」

何も趙廷來の作品論を擁護するつもりも、村上春樹の作品を劣っていると言うつもりもありません。

韓国の小説も「共同体」という大きいテーマから「自我」という個人史に関心が移りつつあり、それに対して危機感を抱く作家がいるほど、村上春樹の作品が韓国の若者にたくさん読まれている現実があります。

文=権 鎔大(ゴン ヨンデ)
出典=『あなたは本当に「韓国」を知っている? 』(著者/権鎔大 発行/駿河台出版社)
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2017.02.03