●パリパリ(早く早く)
中国語で「馬上マーシャン」という言葉があります。「すぐ」という意味ですが、日本、韓国と比べるとその速度面でだいぶ違います。日本と韓国でしたら、読んで字のごとく馬に乗っているのだからそれこそすぐ来ると思いがちですが、中国は日本や韓国のスピード感と格段の差があります。
仕事やレストランなどで、早くしてくれと催促すると「馬上」と返事が返ってきますがすぐ出来てくるとは限りません。中国航空当局にチャーター便の申請を一か月以上前にしても「馬上、馬上」と言われますが、飛行機が飛ぶ一、二日前に許可が下りるのはざらです。許可が出ない間は不安なもので、もし出なかったら予約を入れてくれたお客にどう説明したらいいのかとやきもきさせられました。中国人にしてみれば、なぜそんなにあせるのかわからないのでしょうが、日本や韓国の商習慣からしたら期限目前の許可は胃がキリキリする思いをさせられます。
韓国人は中国人のことを「漫漫的マンマンダ」(スロー、動作が遅い)と蔑んだりしますが、それは韓国を基準にしているからです。何事も「パリパリ」(早く早く)というせっかちな物差しで計るからで、この物差しは日本でも同じではないでしょうか。
しかし、中国の国土は日本の二十五倍ですが、韓国にいたっては百倍の広さですから、いくら馬に乗っているからといって日本や韓国のように「すぐ」には着きません。中国で仕事をしていたとき、まず北のハルビンに行き、それから南の広州に出張する際は、冬物とその他の服を一緒に詰め込んで移動しました。広州から北のハルビンや北東のウルムチまでは列車で三日ぐらいかかるのですから広いといわざるを得ません。「馬上」といっても住んでいる空間が違えば、おのずとその広さでスピード感が違います。ですから、日本や韓国を尺度にして中国人を「のろま」扱いするのは間違いです。はじめてオーストラリアのゴールドコーストへ観光したとき、現地のドライバーのゆったりした動作にカルチャーショックを受けました。
最初は、なぜテキパキ動かないんだろうといらだちましたが、振り返ってみれば私たち韓国人や日本人があくせくし過ぎていたこと、自分たちの基準が世界標準ではないことに気づきました。
文=権鎔大(ゴンヨンデ)
出典=『あなたは本当に「韓国」を知っている?』(著者/権鎔大発行/駿河台出版社)
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