毎年十二月に入るとサラリーマンはソワソワしはじめます。年末の人事があるからです。
日本と違って、韓国の会計年度はほとんど十二月締めの一月スタートです。サラリーマンにとっては昇進が最大の関心事ではないでしょうか。役員になれるかどうか、同期より先に部長になれるかどうか、退任になるのかどうか、個人の人生がかかっていますから情報収集や力のある人を訪ね、「よしなに」と頼み込んだりする人も見かけます。
情の国である韓国では人付き合いを大切にしていますので、人事異動には内外のいろんな場所から圧力がかかり、人事担当はその対応に追われます。
日本のように当人に事前に内示しようものなら、当初の人事案は大幅に変更を余儀なくされます。移動する場合でも「やれ国内じゃなくて、海外それもニューヨークに行きたい」と外部の有力者を通じてねじ込んできますので、その一人のために全体の人事案をいじらなければならないのですから大変です。このような弊害を防ぐため、韓国では原則当人に内示せず人事発表をします。発令を受けた者は急な話で大慌てです。前もって準備する余裕がないからです。特に外国に発令が出た人はなおさらです。
もちろん、このような光景は多かれ少なかれ日本でもあることですが、違うところは韓国では、役員になっても必ずしも任期が保障されない点です。日本なら取締役になったら特別な失敗がない限り任期は保障されますが、韓国の場合は毎年一喜一憂しなければなりません。もちろん退任ばかりでなく、破格の昇進もあるのですから気を揉まざるを得ません。
任期が保障されないことから、韓国の役員は「臨時職員」と呼ばれることもあります。
韓国では「役員」のことを「任員」と言い、この「任」の発音が臨時の「臨」と同音であることから「臨時職員」、つまり期限が保障されない職員と一緒だと言っているわけです。
部長クラス以下のスタッフは組合が守ってくれるので不当に辞めさせることはできませんが、役員は簡単に首を切れることから陰でそう呼び、「偉くなりたくない」という言葉を酒の席でよく耳にしますが、それでも役員になれと言われて拒んだ人を一人も見ませんでした。
最近では、部長職の人がなかなか辞めないので役員に昇進させて首を切るということもあるそうで、自らアピールしても素直に喜べない人事も……。
文=権鎔大(ゴンヨンデ)
出典=『あなたは本当に「韓国」を知っている?』(著者/権鎔大発行/駿河台出版社)
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