「コラム」傑作を見つけよう!号泣必至の『帰ってきて、おじさん』

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日韓でそれぞれにリメイクドラマが多く制作されている昨今ですが、ここにまた韓国ドラマの底力を再確認する作品が誕生しました。それは、ピ(RAIN)が主演した『帰ってきて、おじさん』です。浅田次郎の小説『椿山課長の七日間』を原作とした作品で、日本でも映画化やドラマ化された名作ですのでご存知の方も多いでしょう。その名作が2016年に韓国でドラマ化され、そこにまた新たな息吹が吹き込まれました。

 

思いもよらない展開

“視聴率というのはあくまでも参考でしかない”というのを知らしめた作品は今までも多くありましたが、このドラマもその一つだと言えるでしょう。

この作品の同時間帯の裏ドラマは、高視聴率を誇ったソン・ジュンギとソン・ヘギョ主演『太陽の末裔』でした。そのため、視聴率はさほどよくなかったと揶揄されることもありましたが、多くの人の心に永く残る名作となったことは間違いありません。

百貨店で万年課長だったキム・ヨンス(キム・イングォン)と、元ヤクザでシェフのハン・ギタク(キム・スロ)は過労死と不慮の事故で亡くなりあの世に行きますが、49日の間だけ現世に戻れることになります。

ヨンスはイケメン店長イ・ヘジュン(ピ)に、ギタクは絶世の美女ハン・ホンナン(オ・ヨンソ)に生まれ変わり、それぞれ大切な人たちのためにやり残したことを成し遂げるため、限られた時間の中で奔走します。

そうする中で、生きていれば一生気付かなかったであろう事実が次々に解き明かされていき、韓国ドラマならではの思いもよらない展開に目が離せなくなっていきます。

 

人生を見つめ直すきっかけ

このドラマは出演俳優たちにも大注目です。

中でも主演したピのコミカルさと切なさを自由自在に行き来する演技力は、やはり卓越したものがあります。

2004年にソン・ヘギョと共演して大ヒットした『フルハウス』ではまだ若くて初々しい姿のピでしたが、あれから12年の月日が経ち、30代半ばになった彼は実生活で娘がいてもおかしくない年齢になりました。

そのためか、劇中のピの父親像はとても温かく、残していく娘への愛であふれていました。

天界へ帰る時間が迫ったとき、これから成長していく娘へ送る細やかな贈り物の数々には見ていて涙を止められません。

また、ギタクが生まれ変わったハン・ホンナンのコミカルな姿にも大注目。オ・ヨンソは前作『輝くか、狂うか』でイ・ハニと敵対する役を演じていましたが、今作ではお互いの最愛の人(人間界へ逆送後は女同士の友情)となり、視聴者を楽しませてくれます。

この作品は『屋根部屋のプリンス』『おバカちゃん注意報』などを手掛けたシン・ユンソプ氏が演出を手掛けていて、家族への愛情や周りの人たちへの感謝など、人の死を通して、今を生きている私たちが真の愛と幸せに気付き、人生を見つめ直すきっかけをくれる意義深い作品となっています。

 

極上のおもしろさ

誰もが天から定められた寿命を授かって生まれてきます。それを“定命(じょうみょう)”というのだそうです。その定命を全うし、天に帰る日がいつなのかは、誰にもわかりません。

残された人は容易にそれを認めることはできませんが、悲しみきったあとには、先に旅立った人が残してくれた大きな愛に気付きます。そして、それを糧に私たちはまた力を出して生きていかなくてはならないのです。

この『帰ってきて、おじさん』は温かく感動的な場面にあふれ、号泣必至の作品なのですが、思わず大爆笑してしまうシーンも随所にあり、視聴者を飽きさせません。

細かい伏線に次ぐ伏線が敷かれていて、最終話の最後のシーンまで、あっと驚くしかけが満載です。

登場人物の名前や小道具など、ニクイ演出に韓国ドラマの真髄を見た気がしました。

OSTにも実力派歌手が多く参加しており、ドラマに花を添えています。特にボーカルグループのノウルが歌う素晴らしいハーモニーが切ない感情を最高潮まで導いて、感動の涙を流さずにはいられません。

また、各回の最後に流れる1分程度のちょっと笑えるエピローグもドラマに添えられる極上のスパイスになっています。

最後に、面白いエピソードをご紹介しましょう。

9話のエピローグでは、ピの大ヒット曲「太陽を避ける方法」のワンフレーズが流れます。この選曲がドラマ放映時に話題になりました。

それは、なぜでしょうか。

前述しましたが、同時間帯の裏番組で高視聴率を誇っていたドラマがありましたね。そのドラマのタイトルは『太陽の末裔』。ヒロインはピと『フルハウス』で共演したソン・ヘギョでした。

本当に“太陽”を避けたかったのかどうか定かではありませんが、それが制作陣の意図したジョークだとしたら、この作品がどれほどおもしろいのか、おわかりいただけると思います。

韓国ドラマの底力が見せる極上のおもしろさと感動をぜひお楽しみください。

 

文=朋 道佳(とも みちか)

コラム提供:ロコレ
http://syukakusha.com/

「本日も幸せ日和」

2016.08.25