第4回/チ・ジニ(後編)
『宮廷女官 チャングムの誓い』の出演が決まったあとのチ・ジニは意欲的だった。乗馬やタップダンスを習い、からだの切れをよくするための努力を怠らなかった。さらに、ミン・ジョンホ役の鋭いイメージを生かすために減量にも取り組んだ。
イ・ヨンエが絶賛
『宮廷女官 チャングムの誓い』の出演に合わせて最大限の努力を惜しまなかったチ・ジニ。その甲斐があって、彼は朝鮮王朝時代の逞しい官吏をキリリと演じた。チャングムが苦境に立ったとき、いつも彼女のそばにいて優しく支える「韓国版サムライ」の姿は凛々しかった。
ドラマの撮影が終わったとき、イ・ヨンエはメディアとのインタビューの中でチ・ジニを「今まで共演した俳優の中でも、特にすばらしい俳優」と絶賛した。普段口数が少ない彼女が共演した俳優を称賛するのは非常に珍しいことだ。それほど、イ・ヨンエにとってチ・ジニの存在は大きかったのである。
実際、チ・ジニは俳優仲間やスタッフから信頼されている。彼が『宮廷女官 チャングムの誓い』に出演できたのも、ドラマ『ラブレター』の制作スタッフが積極的に推薦してくれたからである。
中華圏でも人気俳優に!
最終的に、チ・ジニが『宮廷女官 チャングムの誓い』に起用されたのは、強さと優しさを併せ持った彼のキャラクターが、ミン・ジョンホ役とよくマッチしていると判断されたからだ。
しかし、それだけではなく、人間性の良さが長期にわたる難しい撮影にふさわしいと思われたことも事実だった。
実際、『ラブレター』の制作スタッフの推薦は、本当にマトを得ていた。
女官の世界を描いた歴史ドラマの中で、男性の出演陣はサブ的な扱いとなったが、その中でもチ・ジニの演技は光っていた。
このドラマが香港、台湾、中国で放送されるやいなやチ・ジニの人気も中華圏で一気に高まった。
2004年11月、チ・ジニは6年間付き合っていたグラフィック・デザイナーのイ・スヨンさんと結婚した。
「彼女は、6年間も僕の心をワクワクさせてきた魅力的な女性です」
新婦を評してチ・ジニはそう言った。
けれども、幸せな新婚生活を過ごしている時間的な余裕はなく、すぐに台湾のドラマに出演。中華圏での人気を不動のものとした。
『トンイ』で粛宗を好演!
2005年、チ・ジニは香港のミュージカル映画『ウィンター・ソング』で金城武と共演。映画の中で、チ・ジニは踊りと歌も披露している。外国の映画で新しいことにチャレンジし、芸の幅を大きく広げたことは間違いない。
この『ウィンター・ソング』は第62回ベネチア映画祭のフィナーレを飾る作品となり、チ・ジニも世界の檜舞台でレッドカーペットを踏む栄光に浴した。
忙しい日々の中でも、彼は芸能人の野球愛好団「プレイボーイズ」の一員として、俳優仲間と楽しい野球を続けている。
このチームには、キム・スンウ、チャン・ドンゴン、チョ・インソン、チョン・ウソンなどの人気スターが所属していた。チ・ジニにとっても、このチームに在籍していた成果ははかりしれない。人気俳優同士が親睦を深めることで、韓国の芸能界を大いに盛り上げたのである。
2010年には、『宮廷女官 チャングムの誓い』のイ・ビョンフン監督から再び指名されて『トンイ』に出演。19代王・粛宗(スクチョン)を人間味たっぷりに演じて好評を博した。
以後も、『お願い!キャプテン』(2012年)、『大風水』(2012年)などで存在感を示している。
「俳優というのは、死ぬまで勉強しても不足するほどずっと緊張を余儀なくされる職業ですが、演技は面白いですね。確実なことは何一つなくてもやりがいがあります」
そう語るチ・ジニは、悩みがあればプラモデルを組み立てて気分転換をはかるという。そこには、ものづくりを夢見た少年時代の面影も甦る。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
コラム提供:ロコレ
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