チャン・グンソクの生年月日は1987年8月4日。満で29歳になったが、韓国は年齢を数えで言うので、彼もいよいよ30代に入った。自分の年齢についてどんな感慨を持っているのだろうか。
自覚を持って臨んだ『テバク』
すでにチャン・グンソクは半年前から「自分は30代」という意識を持っていた。
3月に開かれた『テバク』の制作発表会でも、彼は「30代最初の作品として全力を注ぎたい」と語っていた。
つまり、チャン・グンソクとしては、自分が30代であるという自覚を持って『テバク』の撮影にずっと臨んでいたのである。
日本から見れば、「ちょっと気が早いのでは……」と思えたのだが、彼は悠長に構えていなかった。「大人の30代にふさわしい作品にしたい」という意識がかなり強かったのだろう。
数字で見れば、『テバク』の最終回は視聴率10.0%で終わった。ドラマの評価の仕方は様々にあるが、ビジネス上では最も重要とされる視聴率で、主役のチャン・グンソクは最後に2ケタの数字を獲得した。地上波だけでなくケーブルテレビも加わって視聴率競争が激しい中で、その数字は及第点と言ってもいい。
もちろん、手放しで満足はしていなくても、本人はおそらくホッとしていたのではないだろうか。
特別な才能を持った人
7月下旬、富川(プチョン)国際ファンタスティック映画祭に登場したチャン・グンソクを見て、まばゆいスター性に改めて感心した。俳優としてではなく、短編映画『偉大な遺産』の監督として映画祭に招聘されたのだが、白いウェアで地味にまとめていても、その華やかさは隠しようがなかった。
「俳優ではなく、監督として映画祭に招待を受けた今日は、僕にとって忘れられない1日になるでしょう」
そう語っていたが、少しふっくらしたように見えたのは、『テバク』の撮影と7月のツアーを終えた安堵感からだったかもしれない。
演技はもちろん、ステージでのエンターティナーぶりも一流で、さらに短編映画の監督までこなしている。多才であることは、1人の人間を語るうえで申し分のないことだ。「天は二物を与えない」というのは、大方の人間には通用しても、特別な才能を持った人には例外となる。
チャン・グンソクも、今は自分の表現力をとことん試してみたい時期なのだろう。将来的には、長編の商業映画に進出する可能性も十分にある。
チャン・グンソクが主演・脚本・監督を兼ねた商業映画を見られる日もいずれ来るかもしれない。
堂々たる30代
俳優であれ監督であれ、ドラマや映画に関わる人は、2つの厳しい審判を受ける。1つは視聴率や興行成績という数字であり、もう1つは視聴者や観客の評価である。この2つで満足する結果を同時に得ることはかなり難しい。
過去の例を見ても、多くの失敗の上にわずかな成功が乗っている。とはいえ、それでひるむ俳優や監督は臆病すぎる。虎穴にいらずんば虎児を得ることはできないのだ。そのことは、言われなくてもチャン・グンソクが一番わかっていることだろう。
かつて詩人のリルケは、詩人志望の若者がアドバイスを求めてきたときにこう述べている。
「もしもあなたが書くことを止められたら、死ななければならないかどうか、自分自身に告白してください」
つまり、命をかける覚悟があるのかどうか、ということだ。
男にとって、30代は20代とまったく違う。20代は「試作の時期」でもいいが、30代は「成果の時期」にしなければならない。
人生は長いが、俳優人生はそう長くない。歌手人生はさらに短い。人気という魔物が、多くの俳優と歌手から、その人生を奪ってしまうのである。
そんな人気に惑わされず、自分が一番だと信じる表現手段に命をかける。
チャン・グンソクの堂々たる30代が始まった。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
コラム提供:ロコレ
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