「コラム」そこまでやるのか!韓国の女優魂

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韓国ドラマを見ていて、ブルブルと恐ろしくなるときがある。ホラーの場面がよく出てくる、というわけではない。いがみあった女同士が、女子トイレで長い髪を引っ張りあって大ゲンカをする場面が見られるからだ。誰も止めなければ、おぞましい形相でいつまでも取っ組み合っている。日本のドラマでは絶対に見られない光景だ。

 

とことんやってみせる

韓国ドラマに出てくる女優は、美しい容貌を誇っていたとしても、必要とあればどんな醜態もさらけだしてくれる。

前述した女子トイレでの取っ組み合いもそうだ。長い髪をお互いに引っ張りあっている姿からは、美しさや気高さは完全に消え、男すら噛み殺すのではないか、という底知れぬ恐ろしさを感じる。

年配のドラマ愛好家たちと話していても、「ああいう女同士の大ゲンカの場面は日本のドラマには絶対にない。やり抜く韓国の女優は本当に凄い。とことんやってみせるからね」という称賛の声すら聞かれた。

韓国の女優を見ていて感心するのは、何でも見せることだ。

たとえば、食事の場面では、食べている女優の口の中がよく見えたりする。噛み砕かれた食べ物が丸見えのこともあるくらいだ。

あるいは、食べながら話している場面では、何かの拍子に口の中の食べ物が外に飛んだりしているが、それでも構わずに、そのまま放送されている。

 

たとえば「キャンディ・キス」

日本だったら、絶対に撮り直す。そうしなければ、女優がカンカンに怒るだろう。しかし、韓国では女優が気にしていない。むしろ、「迫真の演技ね」と思っているのかもしれない。

具体的な場面でビックリしたのは、ドラマ『アイリス』でのキム・テヒだ。

彼女はスンヒという国家安全局の職員を演じていて、部下にあたるヒョンジュンと秋田でのプライベート旅行を楽しむという場面があった。

このヒョンジュンを演じていたのがイ・ビョンホンだ。

秋田のロケでは、イ・ビョンホンとキム・テヒのキスシーンがあった。これは韓国でも後に「キャンディ・キス」として評判になった。

なぜ、「キャンディ・キス」と呼ばれたのか。

イ・ビョンホンが最初に口の中でなめていたキャンディを、キスのときにキム・テヒの口の中に移したのである。その瞬間、キム・テヒは目をクリクリッとさせた。実に愛らしい表情だった。

ただし、日本的に考えてしまう。いくら撮影とはいえ、男優が口の中でなめていたキャンディを、女優が躊躇なく自分の口の中に入れるだろうか、と。

韓国だからこそ、「キャンディ・キス」の撮影が可能になったのではないのか。

 

日本でNGでも韓国ではOK

女子トイレでの髪の引っ張りあい、食事中の口の中が丸見え、会話中に口の中のモノを飛ばす、男優がなめていたキャンディを自分の口に入れる……。日本のドラマでは女優がNGを出す場面が、韓国ではOKになる。

どこに違いがあるのか。

そこで思い出したのが、韓国における鍋の食べ方だ。

日本では菜箸で具を取って自分の受け皿に取ってから食べるが、韓国では自分のご飯用に使っているスプーンをじかに鍋に入れて具を取る。

そのスプーンにご飯つぶが付いていることがあって、鍋にもご飯つぶが入ってしまうのだが、誰も気にせずにスプーンを鍋の中に入れあっている。それが、韓国では当たり前の光景なのである。

そういう国で育つと、女優が口の中の食べ物を見せても、日本ほど抵抗がないのかもしれない。

もう1つの女子トイレにおける髪の引っ張りあいは、どう説明すればいいのか。

韓国の女子トイレでは、たまに見られる光景なのかもしれない。男性である私には絶対にうかがえない世界なのだが……。

 

文=康 熙奉(カン ヒボン)
コラム提供:ロコレ
http://syukakusha.com/

2016.07.08