韓国で第16話が放送されて全24話の三分の二が終了した『テバク』。
チャン・グンソクの演技がますます良くなっている。彼も、演じていて楽しくて仕方がないのではないか。俳優は作品によって育てられる。『テバク』はチャン・グンソクにとって忘れられないドラマになるだろう。
演技表現が芸術的
第16話でのチャン・グンソクは、とても難しい演技を求められた。なぜなら、自分が王の息子であるという驚愕の事実を知らされたテギルが、苦悩しながらも新しい人生を歩き始めたからだ。
王の息子であり、ヨニングン(後の英祖〔ヨンジョ〕)の兄であるとわかった以上、テギルはそれまでのテギルではない。チャン・グンソクとしては、主人公のテギルを別人のように演じなければならない。まさに、俳優としての多様性を問われる場面の連続だ。
しかし、チャン・グンソクは臆することなく、堂々と「王の息子」を演じきっていた。さらに、親しい仲間と接するときには、周囲をホッとさせる余裕の演技も見せている。
そんなチャン・グンソクに対しては視聴者からも好意的な意見が寄せられている。
「『テバク』出演陣の演技は、みんな神のようです。その中でも、チャン・グンソクの演技は1人で何役もやっている感じ。多様なキャラクターをすべて消化しているので賛辞を送りたいです」
「テギルがあまりにもカッコイイ! どんどん素晴らしくなるペク・テギル! 表情演技がチャン・グンソクは芸術的。耳の動きまでも……。アクションシーンもとてもいいですね」
まさに、『テバク』を見ている人たちの喜びが伝わってくるかのようだ。
まさか本物の蛇とは
チャン・グンソクも『テバク』には大きな手応えを感じている。
5月20日には記者懇談会が開かれたが、その場でチャン・グンソクはこう発言している。
「『テバク』では、今までに演じてきた似たような姿の演技ではなく、本当に渾身の力を尽くして、今までにないキャラクターを表現しました。この『テバク』は、私を成長に導いてくれた作品だと思います」
「『テバク』は、演技の喜びを悟らせてくれて、また、他の可能性を広げてくれました。『テバク(大当たり)』という言葉のとおり、私の俳優人生でもとても大きい“大当たり”です」
劇中で苦難のテギルが蛇を食べるシーンがあったが、それについてはこう語った。
「まさか本物の蛇は使わないのでは、と思いながら撮影現場に行ったら、本当の蛇を持ってきました。蛇の飼育場から直接持ってきたようです」
「蛇を食べる場面はきつくなかったですよ。自分も知らずに、撮影現場でカメラの赤いランプが付くと、何かを表現しなければいけないという圧迫感がありました。けれど、撮影が終わってもう一度考えてみたら、吐き気が出てきたこともありました」
本当に驚いた。まさか、本物の蛇を使っていたとは……。
チャン・グンソクもきっと、無我夢中で演技していたに違いない。
1人だけ現代語になっている
ただ、気になることがある。視聴者からはこういう意見も寄せられている。
「チャン・グンソクはなぜ、1人だけ現代口調を使うのですか。特別な理由があるのですか。他の俳優はすべて時代劇の口調なのに、チャン・グンソクだけ現代の口調を使っていて、『これって何?』としきりに思ってしまいます。時代劇ができない俳優ではないのに……(『ファン・ジニ』のときは本当に上手だった記憶があります)」
なるほど、視聴者はこういう部分に違和感を持ってしまうのか。
韓国語がわからないと気づかないかもしれないが、チャン・グンソクが演じるテギルは劇中で現代語を話している。時代劇向きの言葉遣いをしている他の俳優とは違いがあるのだ。これは、チャン・グンソクだけ特別扱いということなのか。
以前にも私(康熙奉〔カン・ヒボン〕)はコラムで指摘したが、テギルは厳しい修業で髪はボサボサなのに髭をきれいに剃り落としていた。また、朝鮮王朝時代に大人の男性は髭を生やすのが当然なのに、テギルだけは髭がなかった。
プロデューサーや監督には明確な意図があると思う。そのうえで、チャン・グンソクが演じるテギルに髭を付けなかったのだろう。そして、言葉遣いまでも……。
これは、俳優として生まれ変わると決意したチャン・グンソクにとって、望ましいことなのか。時代劇には相応のリアリティが求められると思うが、チャン・グンソクだけはいつまでも例外でいいのだろうか。
少なくとも、時代劇のリアリティが薄まることは事実だ。
ドラマを面白くするためならリアリティにこだわらないというなら仕方がないのだが……。
彼の成長を実感できる作品
チャン・グンソクにとっては、チェ・ミンスやチョン・グァンリョルといった名優たちと共演できたことも非常に大きい。
チャン・グンソクは前述の記者懇談会でこう述べている。
「先輩の方々は、自分がまだ不十分で至らない部分があっても、100%至るように助けてくださいました」
この言葉の中に、チャン・グンソクの感謝が込められている。彼も子役時代から通算すると相当なベテランになるのだが、それでも謙虚に先輩俳優(チェ・ミンスやチョン・グァンリョル)の協力に謝辞を示している。きっと、俳優としていい刺激をもらっていたに違いない。
韓国での放送は残り8話となったが、果たしてチャン・グンソクは今後どんなテギルを見せてくれるのだろうか。
これからはいよいよ大勝負のときを迎える。国を賭けた戦いがあり、テギルも反乱を起こす李麟佐(イ・インジャ)と真っ向から対決しなければならない。
チャン・グンソクは『テバク』を「成長に導いてくれた作品」と称した。実感をともなった言葉だ。そうであるなら、これから視聴者は『テバク』を通してチャン・グンソクの成長をたっぷり見ていくことになる。このうえもない楽しみだ。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
コラム提供:ロコレ
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