芸能人が兵役に就くとき、陸軍の軍楽隊や義務警察の警察広報団をめざすことは、自分の特技を生かしながら兵役を遂行するうえで有効である。現在、陸軍の軍楽隊に東方神起のユンホが所属しており、義務警察ではソウル地方警察庁の警察広報団に東方神起のチャンミンが所属している。
各師団に所属する軍楽隊
軍楽隊は、文字通り、軍に所属する楽団である。普通は、大きな師団が軍楽隊を持っていて、師団の中での行事や対外イベントなどで演奏をする。
音楽を職業にするアーティストにとって、2013年に廃止になった芸能兵に匹敵する存在だといえるだろう。
なお、軍楽隊は陸軍にも海軍にも空軍にもあるが、芸能人が軍楽隊をめざすとすれば、選ぶのは陸軍になるだろう。兵役期間が21カ月と一番短いからだ(ちなみに、海軍は23カ月で空軍は24カ月である)。
軍楽隊は希望者が多いので選抜試験が実施される。
分野としては、専門特技兵の中の軍楽兵として合格する必要がある。
募集は、楽器(木管、金管、打楽など)、実用音楽(リードギター、ベースギター、歌手、ピアノ、声楽など)、国楽(韓国伝統の音楽・舞踊)などに分類されていて、厳しい実技試験を通して実力を判定される。
軍楽隊の一番の仕事は音楽演奏である(写真=韓国陸軍公式サイトより)
多忙をきわめる軍楽隊
軍楽兵の合格者は、陸軍本部、国防省、陸軍士官学校、陸軍訓練所、各師団などに配属されていくが、ユンホの場合は第26師団の軍楽隊に所属することになった。
彼は通常の現役兵と同様に、まずは5週間の新兵訓練を受けた。
そこで陸軍兵士としての基礎的な技術を習得したうえで、第26師団の軍楽隊員として軍務に就いた。
日常の軍務は軍楽隊としての練習を行なったり実際に行事に参加したりする。そういう意味でも「特技兵」にあたるのだが、陸軍の兵士であることに変わりはないので、基礎的な軍事訓練も同時に行なっている。
ただし、対外イベントなどは週末に行なわれることも多く、一般兵士よりも多忙をきわめるのは間違いない。音楽と軍務をバランスよく兼務させる力量が必要である。
最近になって、ユンホが特級戦士に選ばれたことが明らかになった。これは射撃と体力に優れた超一流の兵士のみが選ばれる名誉であり、軍楽隊員として専門の音楽活動に励みながら、同時に兵士としての力量がずば抜けていることが立証された。このことは、韓国でも大いに称賛された。
ソウル地方警察庁の警察広報団に所属するチャンミン。右はスーパージュニアのドンヘ(写真=ソウル地方警察庁フェイスブックより)
兵役代替制度としての義務警察
義務警察は、普通の警察官の任務を補う形で「デモの鎮圧」「国会や空港周辺の治安維持」「交通整理や派出所勤務」などを行なってきた。
実際、警察官の人手が足りない状況の中で、兵役対象者が警察の手伝いをしてきたのである。兵役の義務を負う立場としても、市民生活の保護に貢献できるというやり甲斐があった。
そういう意味では、とても有益な軍務代替制度である。
この義務警察も志願者が多いので、選抜試験によって合格者が決められる。
ただし、合格者もいきなり義務警察に入るわけではなく、最初に陸軍訓練所で新兵訓練を受ける。
その期間は、一般の兵士が5週間であるのに対し、義務警察に行く人は4週間になっている。短縮型の新兵訓練といえるだろう。
その4週間の新兵訓練を終えて義務警察に移ると、すぐに教育センターで3週間の新人教育を受ける。
それを終えてから、各地にある地方警察庁に配属されていくのである。
東方神起のチャンミンが入ったのは、ソウル地方警察庁の中にある警察広報団だ。
舞台に立つキャラクターの右側がポスニ。中にチャンミンが入っている(写真=ソウル地方警察庁フェイスブックより)
多様な兵役遂行の時代へ
警察広報団は基本的に18人で構成されていて、学校を回りイベントを通して非行防止や交通遵守をアピールしたり、交流親睦行事でパフォーマンスを披露したりする。ここに入るためには、応募者多数の中から選抜試験を通り抜けなければならない。とはいえ、優れた音楽的才能があれば、十分に合格可能である。
現実的に芸能人が数多く在籍してきており、現在はチャンミンの他に、スーパージュニアのドンヘとシウォンが所属している。
つい最近もチャンミンが啓蒙活動を行なっている様子がソウル地方警察庁のフェイスブックで公開された。
ソウル地方警察庁にはポドリ(男の子)とポスニ(女の子)というキャラクターがいるのだが、舞台の上でぬいぐるみのポスニの中に入っていたのは、なんとチャンミンであった。
ぬいぐるみを脱いでチャンミンが現れたら、みんなビックリだろう。
いずれにしても、兵役を全うする方法は、今後ますます多様化していく。近代兵器の装備によって今では以前ほどの兵力を維持しなくてもいい状況になっている。現に国防省は2022年までに兵士の数を63万人から約52万人に減らす計画を立てている。
そういう流れの中で、むしろ軍楽隊や義務警察の人員を増やしてもいいのではないだろうか。
兵役の遂行にも、ダイバーシティ(多様性)というものが求められているのである。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
コラム提供:ロコレ
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