読みやすくするために言葉の後ろの発音が変化する
次の日本語を読んでください。
観音
漢字を1つずつ読むと、「かん」「おん」となりますが、実際には「かんのん」となりますよね。その理由は明らかです。「かんおん」より「かんのん」のほうがずっと読みやすいので、それが慣例になってしまったのです。このような例として、「感応(かんのう)」も同様です。
つまり、連続する音を読むときに、後ろの音の読みが変化することが日本語にあります。同じような例がハングルでもひんぱんに起きます。これがリエゾンです。「連音化」ともいいます。
その例をハングルで見ていきましょう。ハングルで「恋愛」は「연애」と表記しますが、それがリエゾンされる過程を見てください。
연 + 애 → 연애 → 여내 → 여 + 내
ヨン エ ヨ ネ
YON E YO NE
ローマ字で見ると、わかりやすいでしょう。「YON+E」と分かれていた発音がリエゾンになると、「YO+NE」となって「ヨネ」と発音されます。
こうしたリエゾンが行なわれるときには2つの大原則があります。1つ目は、前の音にパッチムがあることであり、2つ目は、後ろの字の子音が「ㅇ」か「ㅎ」で始まるときです。この2つの大原則を満たしていれば、発音をやりやすくするためにハングルではひんぱんにリエゾンが起こります。
具体的に、リエゾンの例を見ていきましょう。
<正式な表記> <発音上の表記>
簡易 간이(カン・イ) → 가니(カ・ニ)
かんい KAN I KA NI
達人 달인(タル・イン)→ 다린(タ・リン)
たつじん TAL IN TA LIN
信号 신호(シン・ホ) → 시노(シ・ノ)
しんごう SIN HO SI NHO
「簡易」という漢字のハングル読みは「カンイ」が「カニ」になり、「達人」の場合は「タルイン」が「タリン」となります。また、「信号」は本来なら「シンホ」ですが、リエゾンされると「シノ」になります。この場合、「号(HO)」の「H」が脱落しています。
リエゾンをしないで文字のとおりに読んでも間違いではありません。そのまま1文字ずつ正確に読んでいってもオーケーです。ただし、リエゾンできる場合は、それを生かしたほうが発音がずっとしやすくなります。ぜひ試してみてください。
「ら行」における「R」の脱落
日本語の「ら行」で始まる漢字は、本来ならハングルでも発音が似ていました。しかし、現代の韓国では、「ら行」で始まる単語の語頭の「R」を脱落させて読むケースが多くなっています。たとえば、韓国で多い姓の「李」ですが、かつては「リ(RI)」と読んでいたのに、今は「R」を脱落させて「イ(I)」と読んでいます。他では、「柳」もかつては「リュ(RYU)」だったのですが、「R」を脱落させて今では「ユ(YU)」と呼ぶのが普通です。
リ イ リュ ユ
리 → 이 류 → 유
RI I RYU YU
なぜこうした変化が起こったかというと、発音しやすくするための方策だったと推定されます。やはり、「リュ」より「ユ」のほうが言いやすいですから。
このように、韓国では「ら行」に関して「R」の脱落が起こっていますが、逆に考えれば、日本的な「ラ行」の読み方から「R」を脱落させれば、ハングルの読み方に近くなるということです。なお、「R」の脱落は北朝鮮では行なわれていません。「李」は旧来どおりに「リ」と発音しています。
次回からは、再びハングルを簡単に読めるようになる「ヒボン式ハングル」に戻ります。
(文=康熙奉カン ヒボン)
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