大人気を博した『美男<イケメン>ですね』(写真/SBS Contents Hub)
第3回 『美男<イケメン>ですね』の成功
ヨン様に続いたトップ俳優
2004年に日本で韓流ブームが起きたとき、その頂点に位置していた韓流スターは『冬のソナタ』で爆発的な人気を得たペ・ヨンジュンだった。
しかし、韓流ブームは重層的に日本で発展し、新しいスターも生まれた。そのトップがチャン・グンソクといっても過言ではない。
彼の人気を決定づけたのがドラマ『美男<イケメン>ですね』である。韓国で2009年に放送されたが、このドラマはチャン・グンソクの魅力をあますところなく描き出していて、何度見ても面白い。
チャン・グンソクが演じたのはポップグループのカリスマリーダーであるファン・テギョン。人気とは裏腹にいつも不機嫌で、自分の世界だけに閉じこもりたいというナルシストだ。
しかし、チャン・グンソクが演じるのだから、ただの“不機嫌”ではない。そこには、たまらない愛嬌がある。いわば、“不機嫌な愛嬌”というべきか。
この演技は本当に難しいが、チャン・グンソクだからこそテギョンを演じることができたといえる。
そんなテギョンが、グループに新しく入ってきたドジなミナム(パク・シネ)にとことん振り回される。
本来は気難しい性格で、絶対に自分のペースを崩さないテギョンが、ミナムに少しずつ心を開いていく。このあたりの感情の機微が『美男<イケメン>ですね』のストーリーを動かしていた。
それにしても、ミナムに振り回されるテギョンは、なんて魅力的なのだろうか。
トラブルが起きるたびに、テギョンがもっていた優しさや思いやりが少しずつ顔をのぞかせていく。その変わっていく様子をチャン・グンソクが奥深い演技で表現していた。
そうした場面の数々がこのドラマの見どころであり、ミケンにシワが寄ったテギョンが怒りながらも徐々に心を開いていく展開が抜群に良かった。
面倒見がいい兄貴
まさにチャン・グンソクのハマリ役(写真/SBS Contents Hub)
テギョンというキャラクターはチャン・グンソクも非常に気に入っていて、彼は「デビュー後に初めて演技に満足できました」と言い切っている。それほどチャン・グンソクは気持ちよく演技ができたというのだ。
「以前の作品で満足を得られなかったというより、『美男<イケメン>ですね』を通して、現在の自分の姿をそのままお見せすることができたと思います。テギョンという役は、そのときの僕が表現できる最適なキャラクターだったんです」
こう語るとおり、ファン・テギョンはチャン・グンソクそのものだった。俳優みょうりに尽きる主役だったのである。
当然ながら、やる気がハンパではない。
その情熱は、「初めて台本をいただいてから、ずっと台本から手を離さないでいます。ときには、台本を枕元に置いて寝ています」と言うほどだ。
ドラマ関係者たちは、その姿を見て賞賛を惜しまなかった。
「チャン・グンソクは、自身の撮影分を細かくモニターチェックしながら監督と意見交換をするなど、絶えず研究しています。ドラマを見ると、チャン・グンソクという俳優がどれだけリアルな演技に徹しようとしているかがわかります。つまり、苦悩した跡がそのまま伝わってくるのです」
確かに、チャン・グンソクは役作りでは苦悩した。それでもテギョンという役に集中できたのは、共演者と息がピッタリ合ったからだ。
「撮影はとても楽しかったです。共演した俳優たちは年下でしたが、僕は兄のような立場でみんなを引っ張っていきました。プレッシャーもありましたが、みんなが本当にがんばってくれたと思います」
このドラマを撮影していた2009年当時、チャン・グンソクはまだ22歳だった。この年齢で共演者を引っ張っていかなければならないのだから、彼も本当に大変だった。しかし、もともと面倒見がいい性分なので、ごく自然体でムードメーカーの役目を果たすことができた。
結果的に、『美男<イケメン>ですね』は、チャン・グンソクという個性そのものを大きく成長させた。
(文=「ロコレ」編集部)
コラム提供:ロコレ