
「シム・ウンギョン、あなたが笑えば私もつられて笑う」「是枝裕和、あなたの映画には私たちの人生がある」
第31回釜山(プサン)国際映画祭(BIFF)の開幕式で、映画人たちを驚かせる異例の演出が繰り広げられた。
華やかなレッドカーペットに登場したスターたちを迎えたのは、一人ひとりの名前や出演作品に合わせて制作された特別な楽曲だった。自分の名前が突然歌詞になって流れるという予想外の歓迎に、俳優たちは驚き、笑い、音楽に合わせて踊り出すなど、思い思いの反応を見せた。
この演出を手掛けたのは、開幕式の総演出を担当したミン・ギュドン監督。自ら歌詞を書き、生成AIを活用して、映画人それぞれの個性や作品の特徴を盛り込んだ「献呈曲」を制作したという。
映画界でAIの活用が注目される中、ことしの釜山国際映画祭では、その技術がレッドカーペットを盛り上げる意外な形で登場した。
■シム・ウンギョンは驚き、リュ・スンリョンらはダンス!スターたちの素顔が話題
映画人の名前や作品名を盛り込んだ音楽が流れ始めると、レッドカーペットは一気に盛り上がった。
特に注目を集めたのは、予想もしなかった歓迎を受けたスターたちのリアクションだ。
シム・ウンギョンとウ・ドファンは驚きを隠せない表情を見せ、映画「チョン家」のリュ・スンリョン、パク・ヘジュン、オン・ソンウは音楽に合わせて楽しそうにダンスを披露した。
さらに、Netflixオリジナルシリーズ「クルアルバ -おいしいバイト-」のキム・ミンハ、イ・ヒジュン、ユン・ギョンホは、思わず笑い出す姿を見せた。
普段は華やかで緊張感のあるレッドカーペットが、この日ばかりはスターたちも観客も一緒に楽しむ音楽イベントのような空間に変わった。
思いがけない音楽のプレゼントによって、俳優たちの自然な表情が次々と引き出されたことも、今回の演出の大きな見どころとなった。
■「なにわ男子」道枝駿佑も喜び!是枝裕和監督は「頭の中でずっと流れていた」
韓国の俳優たちだけでなく、日本から参加した映画人たちも、このユニークな演出を楽しんだ。
是枝裕和監督は「私の名前で歌まで作ってくださってうれしかったです。その日の夜、ずっと頭の中で流れていました。不思議な体験で、恥ずかしくもありましたが、楽しかったです」と振り返った。
一方、「なにわ男子」の道枝駿佑も、自分の名前が盛り込まれた特別な楽曲についてコメントした。
道枝は「レッドカーペットではたくさん歓声を送ってくださって良かったです」と語り、「道枝駿佑の歌を作ってくださったので、楽しく聴きました」と明かした。
道枝は主演映画「うるわしの宵の月」が同映画祭のオープンシネマ部門に正式出品されたことを受け、釜山を訪れていた。
また、映画の公式イベントでは、レッドカーペットで突然自分の名前が入った曲が流れたことについて、共演者の安斉星来と「あれは何だったんだ?」と話していたというエピソードも披露している。
安斉が釜山の人々からの歓迎ソングではないかと説明すると、道枝も納得した様子を見せた。
突然流れてきた自分の名前入りの楽曲は、道枝にとっても忘れられない体験となったようだ。
映画祭のレッドカーペットといえば、豪華な衣装に身を包んだスターたちがカメラのフラッシュを浴びる華やかな舞台。しかし今回は、映画人自身が音楽の主役になるという、ひと味違った歓迎が用意された。
■約2時間のレッドカーペットを「一つの公演」に…演出監督が明かした舞台裏
今回の演出には、映画人たちに特別な歓迎の気持ちを伝えたいというミン・ギュドン監督の思いが込められていた。
ミン監督は韓国メディア「ヘラルドミューズ」に対し、「釜山国際映画祭の開幕式には、別途祝賀公演がありません。観客の入場からレッドカーペットまで、約2時間を音楽で満たさなければならないので、この時間を一つの『事前公演』として考えました」と説明した。
実は昨年も、レッドカーペットの音楽を大胆に変える試みを行っていた。
それまで流れていたクラシックやラウンジミュージックに代わり、ヒップホップやテクノ、EDMなどを取り入れ、会場をクラブハウスのようなサウンドで満たした。
DJが現場で音楽をつなぎ、レッドカーペットを見守る観客が、まるでコンサートに来たかのような体験を楽しめるよう演出したのだ。
そして、ことしはその試みに生成AIを組み合わせた。
ミン監督は「基本的なハウスDJの演出は昨年と同じように続けながらも、同じリズムが2時間ずっと繰り返されると、感覚が鈍くなりやすいと考えました」と説明。
続けて、「そこで、適切な間隔でゲスト一人ひとりのための歌を入れました」と明かした。
さらに、「私たちはこれらの曲を『献呈曲』と呼びました。レッドカーペットを歩くゲストに『自分は本当に歓迎されているんだ』と感じてほしかったんです」と、その意図を語った。
単に音楽を流すのではなく、スター一人ひとりが主役になれる瞬間を作ること。それが今回のサプライズ演出の狙いだった。
■「本当のお祭りみたい!」映画人も観客も大盛り上がり
今回のAI献呈曲には、さまざまな反応が寄せられた。
「本当のお祭りのようだ」「レッドカーペットの主役たちがみんな楽しそうだった」「AIを活用した音楽とは新鮮だ」といった好意的な声が上がった。
一方で、「AIで作ったことがあまりにも分かりやすい」「映画祭が軽く感じられる」「献呈曲が流れない映画人との扱いに差があるのではないか」という指摘もあった。
それでも、実際にレッドカーペットを歩いた映画人たちからは、演出を楽しんだという反応が寄せられたという。
ミン監督は「思っていたよりも、はるかに楽しんでくださる反応が多かったです」と振り返った。
続けて、「シム・ウンギョンは本当に楽しい開幕式だったと言っていましたし、ユン・ダンビ監督や是枝裕和監督、シャルロット・ゲンズブール、『クルアルバ -おいしいバイト-』チームの俳優たちも、予想していなかった歓迎に本当に興奮したと直接話してくれました」と明かした。
映画人たちだけでなく、会場の観客もこの演出を楽しんでいた。
次はどの映画人の名前が歌われるのか、どの作品にどんな音楽が用意されているのか。観客たちは次々と登場するスターたちを見守りながら、予想外の楽曲が流れる瞬間を待ちわびていたという。
ミン監督は「客席からは、次はどの作品にどんな音楽が流れるのかと待つ楽しみがあり、サスペンスさえ感じられたという話も聞きました」と語った。
レッドカーペットを歩く映画人だけでなく、それを見守る観客にとっても、音楽が新たな楽しみになっていたことがうかがえる。
■AIが生んだサプライズ、その主役は映画人たちの笑顔
今回の献呈曲には生成AIが活用されたが、ミン監督が大切にしたのは、あくまでも映画人たちを歓迎するという思いだった。
ミン監督は「制作過程の一部で使われた道具よりも、作品そのものが何をしようとしたのかを見るべき時が来たと思います」と語り、「誰かを歓迎するために作った歌であり、AIはその気持ちを音にする過程で活用した道具でした」と説明した。
また、「どんな道具を使ったかは重要ではないかもしれませんが、誰が何を決定したかは、今も重要です」と強調した。
新しい技術を取り入れること自体が目的ではなく、それによってどのような体験を届けられるのか。今回の演出は、そんなミン監督の考えを形にしたものだった。
華やかなレッドカーペットで生まれたのは、AIという新しい技術と、映画人たちの自然な表情が交わるユニークな光景だった。
シム・ウンギョンの驚いた表情、リュ・スンリョンらの楽しそうなダンス、是枝裕和監督や道枝駿佑の喜びのコメント。映画人たちへの特別な献呈曲は、レッドカーペットを一つの公演会場のように変え、映画祭に印象的な場面を生み出した。
AIを活用した演出には賛否もあったが、スターたちの飾らない姿を引き出し、会場に笑顔と驚きをもたらしたことは、第31回釜山国際映画祭を彩る出来事の一つとなった。
WOW!Korea提供






