シャー・モー監督が本作でろう者について描こうとしたきっかけは、数年前にろう者の訴訟を専⾨に扱う弁護士の取材をしたことだったという。監督は、「この取材を通じて、その法律事務所で働いているろう者のアシスタントの女性に出会いました。彼女は、中国で初めて司法試験に合格したろう者で、そのとき、彼女は妊娠していました。もともとの取材対象は弁護士だったのですが、私は次第に彼女のほうに強い興味を持つようになったんです。私が特に気になったのは、“もうすぐ生まれてくる子どもと、どのように向き合っていくのか”ということでした」と振り返る。監督にはそれまで身近にろう者がおらず、この出会いがろう者のコミュニティに強い関心を寄せるきっかけになったそうだ。その上で、父と娘の無条件の愛を物語の中心に置いた理由について、「私たちはみな、ある種の不確実な状態の中で生きています。人と人との関係も、社会全体の空気も、どこか不安定で揺らいでいる。その中で、個人にとって唯一確かなものと言えるのが、血縁の存在ではないかと思うんです。もちろん血縁関係にも反発はありえますが、今の私にとって不確実な世界の中でつかめる確かなものがこの“父娘の愛”でした」と明かしている。
【STORY】
耳の聞こえない父シャオマーとろう者のコミュニティで暮らす7歳の娘ムームー。「私がいないとパパはお金を稼げない」と小学校には通わず、日々コーダとして生活を支えていた。そんな折、5年前に離婚して出ていった母親シャオジンが「ムームーに“普通”の生活をさせたい」と引き取りに戻ってくる。彼女なりに娘の将来を考えての提案だったが、シャオマーは激高して取り合わず、親権をめぐって裁判で争う事態に発展してしまう。娘との生活を守るべくシャオマーは新たにホテルで住み込みの仕事を始め、ムームーを小学校に通わせ始めるが、耳が聞こえないことから職場でトラブルが相次ぎ、立ち退きを命じられる。追い詰められた彼は、意図的に事故を起こして自動車保険をかすめ取る闇ビジネスに加担してしまうのだった。ただ一緒にいたいだけなのに、非情な運命に引き裂かれていく父娘。分かちがたい絆で結ばれた2人の愛は、逆境を乗り越えられるのか――。
『愛がきこえる』
監督:沙漠(シャー・モー)
出演:张艺兴(チャン・イーシン)李珞桉(リー・ルオアン)
原題:不说话的爱|英題:MuMu|2025年|中国|中国語|111分|ビスタ|カラー|5.1ch|日本語字幕:本多由枝|配給:マーチ
© CKF PICTURES (Ningbo) Co., Ltd. / iQIYI Pictures (Beijing) Co., Ltd. / Shanghai Tao Piao Movie & TV Culture Co.,Ltd.
公式サイト march.film/aigakikoeru
公式X @march_film_0303
配給:マーチ
2026年1月9日(金)全国ロードショー




