高校生を描くために予備校で先生として過ごした
そして女子高生たちの生き生きとした姿を描き出すために、綿密な取材が行われたという。「わたしは予備校の先生としてしばらく過ごしていたんですけれども、このようにわたしは口下手なので、話すことも得意ではないんですけれども、その予備校の塾で、学生さんたちが日頃どんな風に会話をしているのか、どんな雰囲気があるのかというのを観察して、それらをシナリオに反映させていきました。かなり満足のいく出来になったんではないかなと思っています」と振り返る。
キャスティングにおいては当初、実際の女子高生を起用しようと考えていたというが、「この映画をより多くの方たちに観てもらいたい」という思いから、主演のセミ役にはパク・ヘス、セミが想いを寄せるハウン役にはキム・シウンという若手実力派を抜てきした。
「お二人の演技のスタイルはとても違うのですが、キム・シウンさんは動物的で、まさに天才だと思わせてくれるような本能的な演技をする俳優。一方、パク・ヘスさんは、事前の準備を徹底的に行い、現場では監督が求めるものを的確に理解し表現してくれる俳優。それは本当に驚かされました」
この映画を制作する上で、セリフだけでなく、セリフが動いていく瞬間、セリフのやりとりの中で、どのようなリズムが生まれるのか、ということを大事にした、と語るチョ監督。「二人がやりとりをしている姿というのは、とても相乗効果を生んだのではないかと思っています」と満足げに語った。
盟友パク・ジョンミンの出演と笑いに包まれた現場
そして映画のアクセントとなる“とある男”の役どころで出演するのが、映画『ただ悪より救いたまえ』などで知られる俳優パク・ジョンミンだ。「彼とは高校時代からの付き合いで、大学時代には、軍隊に行く前まで一緒に自炊をしながら過ごした友だちでした。その後、彼が俳優としてあまりにも有名になったので、彼の知名度を少し利用させてもらおう、という気持ちでオファーしたんですが、彼はとても快く承諾してくれました」と冗談めかすも、現場での撮影について「台本上では20代後半のハンサムな男性として考えていたのですが、彼が現場で繰り出すセリフは、ほとんどがアドリブで。しかもその口調がまるで“30代のおじさん”のようで。それがかえって面白くて、現場はいつも笑いに包まれていました」と明かした。
そして会場からの質問を受け付けることとなり、「今後の俳優業と監督業のバランスは考えている?」という質問が。それには「わたしは普段、何かを深く考えたり、計画を立てたりといよりは、流れに身を任せて生きているタイプだと思います。なので今後、これに一生懸命取り組もうということを考えているわけではないんです。特に演技に関しては自分がしたいからということではなく、選ばれなければならないので。とにかく一生懸命、感謝の気持ちを持ちながら演技を続けていきたいと思っています。監督業に関してもこういう話を映画にしたいという考えはおぼろげにはあるんですが、まだこれを映画として撮りたいというアイデアまで、たどり着いてはいない状況ではあります、ですから今は少し休むタイミングなのかなと思っています」と明かした。
そんなイベントもいよいよ終盤となり、最後のコメントを求められたチョ監督は、「個人的には、この映画は理解するのが難しい作品かもしれないと思っていました。それでも最後まで映画を観てくださったことに心から感謝します。そして今回このように日本に呼んでいただいてありがとうございました。また機会があれば、必ず日本に戻ってきたいと思います」と呼びかけ、再来日を誓った。
<ストーリー>
修学旅行の前日。セミ(パク・ヘス)は、教室で不思議な夢を見た。胸騒ぎを覚えたセミは学校を抜け出し、想いを寄せるハウン(キム・シウン)の病室へと走る。自転車との衝突で脚をけがしたハウンは、修学旅行を諦めて入院中なのだ。 セミは、一緒に修学旅行に行こうと必死でハウンを説得し、ビデオカメラを片手に何とか旅費を工面しようとする。しかしどこか煮え切らないハウンの態度に、セミの抑えていた感情がついに溢れ出す。心に秘めてきた想いを、今日こそ伝えたい。お互い言葉にならない気持ちを抱えたまま、2人だけの夜が訪れた━━。
監督:チョ・ヒョンチョル / 脚本:チョ・ヒョンチョル、チョン・ミヨン
出演:パク・ヘス、キム・シウン、オ・ウリ、キル・へヨン、パク・ジョンミン / 撮影監督:DQM / 音楽:オヒョク(HYUKOH)
2022年|韓国|118分|ビスタ|5.1ch|G|原題:너와 나|英題:The Dream Songs|字幕翻訳:廣川芙由美|配給:パルコ
公式HP:https://youandi-film.com / X:@YOU_and_I_film / instagram:@humbaba_1114







