ほんわかとした雰囲気から一転。再び懐中時計を手にするTENの映像が映し出される。時計の針が進むと共に、物語は次の世界へ。歩いても歩いても前に進めない階段が続く映像が終わると、真っ白な衣装に身を包んだTENが登場。
寂しげなギターサウンドとTENの情感豊かなボーカルが際立つ「Shadow」、ダークなムード漂う「Sweet As Sin」、重低音が響く中毒性のある曲「Flash」、そして日本ソロデビュー曲「Silence」などを次々に披露。TENの呼吸まで感じられるような繊細なダンスと、透明感の中に妖艶さを宿した幻想的な歌声で会場を魅了した。
クールな表情を見せていたTENも、MCになると一転、「イエ〜イ!」と無邪気な笑顔でファンを癒してくれる。披露した楽曲について、「いつもお話ししましたが、僕はこのセクションが一番好きです。本当にかっこいいセクションだと思います」と自信たっぷりに語り、さらに、「おいしいセクションです」とコメント。すると会場には一瞬ハテナマークが飛び交うが、「日本語を作ってしまいましたね。“かっこいい”ものを見た時に、“マシッタ(おいしい)”と言いますが、僕にとってその“おいしい”は“かっこいい”と同じ意味なので、“かっこいい”と思った時は“おいしい”と表現してください」と説明すると、すぐさま客席から「おいし〜!」の声が飛び交う。それに応えてTENは、「いつも、おいしいものをあげる」と微笑み、ファンをさらに沸かせた。
今回の日本ソロツアーでは、大阪、福岡、愛知、東京(立川・渋谷)の5都市を巡り、各地の方言も覚えたというTEN。「韓国に戻る前に復習をします」と言って、「大阪は“めっちゃ好きやねん”、福岡は“ばりすいとーよ”、名古屋は“でら好き”」と、完璧な発音で披露。東京では「ウェイズニのみなさん、本当に好き〜!」と叫び、ファンを大いに喜ばせた。
次のステージに進む前に、「水を飲みます」と言って水分補給するTENだが、水を飲むだけでも会場からは「かわいい」や「かっこいい」という声が飛び交う。TENがファンに教えた「おいしい(=かっこいい)」という表現を使おうと、ファンが「おいしー(かっこいい)」と叫ぶと、TENは「何がおいしいですか? 僕がおいしい? 変な人ですね(笑)。ダメ(笑)」と、いたずらっぽい表情で返しながら、ファンとの微笑ましいやり取りを楽しんでいた。
会場に、温かみのある柔らかなピアノサウンドが響き渡ると、「Butterfly」のステージが始まる。オーケストラの広がりのある美しい旋律が流れる中、懐かしい記憶を呼び起こすような切なさを、TENは伸びやかでスウィートな歌声に乗せて届け、ファンをうっとりさせた。
続く「Birthday」では、手首に鎖が繋がれた状態のTENの姿が浮かび上がると、会場に熱い声援が上がる。静謐な空間の中に力強く刻まれるビートが広がる中、透明感の奥に艶めきが潜む歌声を響かせ、その幻想的な世界観へとファンを引き込んでいった。さらに、セクシーさとラテンの情熱が溶け合った「Water」へと続き、TENは圧巻のパフォーマンスでその魅力を惜しみなく放出。一瞬たりとも見逃すまいと、ファンも彼の一つ一つの動きに集中し、全身でその世界を受け止めていた。
再び、タイムワープする映像がビジョンに映し出され、TENが必死に走り、飛び立った先はタイ語の電光看板が煌めく都市の夜景。次の瞬間、ステージではダンサーたちがパッションあふれるパフォーマンスを展開。まるでタイの熱を帯びた情熱そのものを表現しているかのような躍動感で、観客を一気に異国の熱狂へと引き込んだ。そしてTENが登場し、「Make some noise!」の叫びと共に会場は一気に大熱狂に包まれる。どっしりとした低音が響き渡るヒップホップナンバー「ON TEN」では、自信に満ちた旋律的なラップを繰り広げ、続いてグルーヴ感のあるリズムが広がると、ファンの掛け声で始まった「STUNNER」のステージへ。鋭さとしなやかさを兼ね備えたダンスに、ウィスパーボイスとシックなラップが交錯し、会場の熱気はさらに高まっていく。そして、TENの代表曲「Nightwalker」へと続くと、ファンの掛け声もいっそう大きくなり、空間は歓声と情熱で満ちあふれた。
ファンの掛け声が大きく、TENも驚いた様子。彼自身も「ありったけの力を注ぎました」と語った。
「このセクションは、僕にとってローラーコースターのようなセクションです。最後になって“ウワー”ってなりますから。でも、このセクションも最高に楽しいです。このセクションの時は、みなさんも一緒にこうして(一生懸命に応援する真剣な表情を再現して見せて)、みなさんの眼差しから情熱が感じられました。これがまさにアーティストとファンが一緒に作りあげるステージです」と話すと、会場からは大きな拍手が沸き起こった。
続けて、「日本活動の初めてで緊張したけど、みなさん笑顔で見てくださり、まだ完璧ではない日本語も優しく応じてくださって応援してくださるので感謝していますし、とても感動しました。デビューしてから時間が経ちましたが、その間日本で活動してみたいと長くずっと思っていました。なので、こんな風に迎えることができてまだ信じられません。ありがとうございます」と感慨深く語った。さらに、「来年もいきましょうか。わからないけど、あったらいいですか? そしたらよろしくお願いします」と笑顔で伝え、ファンの期待を一気に高めた。
そんな再会の約束を交わしつつ、気づけば終演の時間が近づいていた。TENは「みなさんと一緒に過ごしている時間がとても大切なので、今すごく寂しい気持ちになっています」と話し、最後一曲です」と告げると、会場から「嫌だー!」という声が響く。この声に、TENも名残惜しい表情を見せながらも「この言葉がいいなと思っているのですが、終わりがあれば新しい始まりがあるので、どんな始まりになるかわか
りませんが、その始まりではきっといいものを見せられるのではないかと思います。これからもよろしくお願いします!」と、日本語でしっかりと思いを届けた。
そして、「最後まで僕と一緒に頑張りましょう」と呼びかけ、「準備しましたか?」と声を上げると、ダンサーたちを呼び込み、「BAMBOLAレ〜ッツゴー!」の掛け声で「BAMBOLA」へ。関節の一つひとつまで精密にコントロールされた、しなやかで滑らかなムーブと、リリカルにリズムを刻む圧巻のパフォーマンス。ファンも全力の掛け声で応え、「一緒に作るステージ」というTENの言葉がそのまま形となったかのような、会場全体の一体感が生まれていた。
熱気と感動が渦巻く中、アンコールを求める「チタポン!(TENの本名)」の声が響き渡る。しばらく「チタポン」コールが続くと、ビジョンには客席の様子が映し出された。そこには、TENのツアー完走を祝うメッセージや、タイ語で綴られたファンからの温かい言葉が次々に映し出され、会場は感動に包まれる。そして、ビジョンに映し出されたタイムワープの続きと共に、再びTENが登場すると、なんと、客席に姿を現すTEN。爽やかで弾むようなギターリフが流れ出すと、「Paint Me Naked」を笑顔で歌いながら客席を回り、ファンとの距離をぐっと縮めていく。その姿に、会場中が幸せで満たされていた。
「きょうも最高のオーディエンスになってくれてありがとうございました。みなさんが準備してくださったうちわやボードや写真もとてもかわいいです。ありがとうございます」と、TENが感謝の気持ちを伝える。そして、一番上の3階席に視線を向けて、日本語で書かれた横断幕を見つけると、「日本ツアーお疲れ様」と書いてある温かなメッセージを声にして読み上げ、改めて感謝の言葉を贈った。
「最初の公演から今日まで、完璧ではない姿もあったかもしれませんが、ずっと僕のことを応援してくれて好きになってくださるファンのみなさんに改めて感謝の言葉を伝えたいです」と振り返るTEN。「完璧ではなくても、一つ一つ力を合わせて一緒に作っていこうね。OK?」と、優しく呼びかけると、客席からは大きな拍手が返ってきた。
記念に一緒に写真を撮ろうと、TENが客席に背を向けて準備をしていると、突然、会場いっぱいにファンの歌声が響きはじめる。ファンが掲げたスローガンには、「You are STUNNER. We are always with you」の言葉。そして、歌われたのは日本オリジナル曲の「夢の続き」。
「♪夢の続きを見よう いつもそばでずっと何気ない一言で そう、強くなれたり あぁ、信じてみるよ 交わした約束も 一人じゃできないことと 当たり前なんてどこにもないから この想い 届きますように」と、優しい歌声と想いが会場を包み込む中、TENは驚いたように目を見開き、そして込み上げる涙を抑えきれず、「驚いたじゃないですか!」と鼻を赤くしながら目を潤ませる。思いがけないファンからのサプライズに、驚きと感動が入り混じった表情を浮かべ、その表情に思わずもらい泣きするファンの姿もあちこちに見られた。
感動のサプライズが成功したあとは、「それでは聴いてください」と日本語で紹介し、椅子に腰掛けて「夢の続き」をしっとりと歌う。ファンと共に駆け抜けてきたツアーを静かに振り返るように、温もりのこもった歌声を会場に響かせた。曲のラストでは、感極まり涙で歌えなくなったTENの代わりに、ファンの歌声が包み込むように響き渡り、ひとつの歌を一緒に完成させた。
大きな拍手が送られる中、ビジョンにはサプライズ映像が流れる。そこには、日本ツアーを支えてきたスタッフやダンサーたちからの温かいメッセージが映し出され、TENは再び感動の涙を流す。
彼は「今年はまだ終わっていませんが、大変だった分だけ、韓国のソロもそうでしたし、日本のソロまで、本当に素晴らしいご縁と出会いがあったと思います。素敵なお友達にもたくさん出会いましたし、日本でツアーは初めてでしたが、このように素敵な思い出を一緒に作ることができて、本当にありがとうございました」と、心からの感謝を伝えた。
そして最後は、軽快なリズムとアフロビートが心地よい「Waves」のステージへ。スチールパンの陽気なサウンドとTENの柔らかく伸びやかな歌声、身体全体を波のようにしたグルーヴィーなダンスを繰り広げる。ダンサーたちとは即興のダンスを通して心を通わせ、ステージには自由で楽しい空気が満ちあふれ、会場中に笑顔が広がった。
ステージを終えると、TENは「きょうは楽しかったですか? いい思い出を作ってくれてありがとうございます」と日本語で伝え、「ある意味、今年の僕のソロとしての一つのチャプターが終わりましたね。ネクストチャプターを期待してください」と再会への期待を込めてメッセージを伝える。そして、「これからもよろしくお願いします。バイバイ! バイバーイ」と眩いほど愛らしい笑顔を見せてステージを後にし、最後の最後までファンの「かわいい!」という声が鳴り止まない、心に残るコンサートとなった。
こうして幕を閉じたTENの初となる日本ソロツアーは、歌声一つ、ダンスの一振り、そして繊細で力強く、クールで愛らしい笑顔までもが、TENというアーティストの魅力を存分に映し出していた。彼の「完璧じゃなくても、一緒に作っていこう」という言葉が象徴するように、このツアーは、アーティストとファンが心を通わせながら一緒に歩んだ、“おいしい(=かっこいい)”最高のステージとなった。
取材:Korepo(KOREAREPORT INC.)