※ドラマのネタバレになる内容が(ラストに関わる内容も)含まれています。
俳優ヨン・ジョンフンは、7月に韓国で放送終了したSBSドラマ「仮面」で歴代級の“悪いヤツ”になった。実際、彼の悪役は今回が初めてではない。OCNドラマ「ヴァンパイア検事」シリーズや、MBNドラマ「愛もお金になりますか」などの作品で強烈な演技を見せ、何回もイメチェンをしてきたが、大衆にとってヨン・ジョンフンは相変わらずソフトな“フンナム” (女性の心を和ませる男性を示す造語)のイメージが離れないでいる。
だからだろうか。ドラマ「仮面」ではミン・ソクフンとして鋭い悪人ぶりを見せ、視聴者の心を揺さぶった。ヨン・ジョンフンの妻で女優のハン・ガインですら「初めは、優しい人が悪いふりをしているようだったけど、10話が過ぎると本当に“悪いヤツ”になっていた」と感嘆するほどだったとか。
「絶対的な悪を見せたかったんです。以前の悪役に似た役で、いい人になったり悪い人になったりというのを繰り返す屈曲がある人生を描くことに面白さを感じました。しかし今回は最初から悪魔であり悪人だったじゃないですか。地上波のドラマでこのような悪役に会うのは難しいですが、情けを感じられないくらいの悪い役をやってみたかったんです。冷徹で、映画『ディアボロス 悪魔の扉』のような悪魔と取引をするような姿を描いてみたかったので、むしろ僕には楽しい作品でした。たくさん悪口を言われても、こうしたら面白そうだな、と考えていたんです。」
ヨン・ジョンフンは悪役について「心の中にあるものを引き出して表現することができるので、スッキリする」とメリットとして挙げた。しかし人を絶えず憎むことも多くのエネルギーと体力を要することだ。特に今作のミン・ソクフン役の場合には、20話分ずっと極限の感情を持ち続ける人物であったため、これを演じるヨン・ジョンフンはさらにそうであっただろう。
「ずっと圧迫しなければならないし、テンションを保っていかなければならない部分がありました。僕も人だからか、20話分を演じ続けてみて、大変でした。特に結末が確定した状態で演じていたため、エンディングをうまく見せるには、中間からソクフンの感情をうまく整理しなければならない難しさがありました。ミヨン(ユ・イニョン)やジスク(スエ)に対する感情、そしてウナ(スエ2役)をどれほど愛していたのかなど、わからなければならなかったんです。」
俳優たちはよく、作品に臨むときに「入り込む」という言葉を使うように、配役に没入するケースが多い。ひどい場合にはキャラクターに合わせて実際の性格も変わるというが、ソクフンのような強い性格のキャラクターを演じたヨン・ジョンフンはどうだったのだろうか。
「僕は没入してもすぐに抜け出そうと努力するほうです。そうしなければ、つらいから。だけどソクフンを演じながら、ほかの作品の時よりも深く没入したように思います。だから中盤ぐらいには、むなしく感じて精神的につらい部分がありました。ジスクにウルトラパワーが生じて、全て敵になる感じを受けた時は、入り込みすぎないように気をつけなきゃと思いました。」
ソクフンは皆が感嘆するほど“卓越した”悪役だったが、これを演じたヨン・ジョンフンが考える悪役は、実は他にいた。まさにタイトルどおり「仮面」をつけたまま、他人の人生を代わりに生きなければならなかったジスクだ。
「多くの方が、ソクフンがものすごくダメだとおっしゃいましたが、僕はソクフンを演じたので、彼の感情に従ってみると、ジスクの方がダメだと思います。ソクフンは、ヤミ金融での借金に苦しんで死ぬ直前のジスクを助けたし、金をあげたし、財閥一家のいい男とくっつけてやったし、もてあそんだ男が現れたから消してやったし、ヤミ金業者をつぶしてやったし…いい人じゃないですか。結果的に全てジスクのためだったわけです。僕がこんなことを言うから、ユ・イニョンさんはこう言うんですよ。『私は悪役をたくさんやってきたけど、悪役ならそう考えないと。自分は悪くないって』ってね。」
ヨン・ジョンフンは、一部の視聴者が「仮面」の展開の遅さに対する残念な気持ちを全て知っていた。
「シノプシスの内容よりはもう少し他の部分があったんです。どっちみち、俳優の考えでどうかなるものではありませんから。演じてみると、どこまで進みたいんだろうと疑問に思うこともありました。そうすると他の方向でいかなきゃいけないのかなと、迷ったりもしたんですが、その時再びシノプシスを見ると、僕が力を抜けばドラマの悪役自体がなくなると思って、むしろ強く押していったんです。最後は20話までいくのなら、揺れてはいけないと思いました。他の俳優さんも認めてくれました。お前たちが力をなくしてはダメだと。スエやチュ・ジフン、ユ・イニョン、みんな大変だったけど、僕たちで団結して
違う方へ行くのを防いだと思います。」
ドラマ「仮面」はミヨンが自殺して終わる多少衝撃的な結末にも、多くのことを集中させていた。これについてもヨン・ジョンフンは、さらに劇的になるかもしれないとし、自分の期待よりも穏やかな(?)結末に残念な様子を見せた。
「今作の結末は初めから決まっていました。シノプシスでは主人公であるジスクとミヌのカップルもハッピーエンドではなく、ミヨンとソクフンもさらに劇的な状況でした。元々、ミヨンが最後に会ったソクフンを気絶させてホテルの部屋に連れて行ったあと、テープで縛った彼を抱きしめて自殺するとなっていました。ミヨンはそうしてでもソクフンの心に一生残るという目的を達成するんです。韓国の地上波では、全く見ることはできないシーンだが、もし放送されたらセンセーショナルを起こすと思います。」
「エンディングにおいては、与えられた状況の中で最善を尽くしたと思います。ドラマというのは脚本家が書いているうちに、全てのキャラクターに100%移入することができない限界があります。序盤ではキャラクターを形成するために台本に従いますが、最後の方ではズレてくる部分も出てきます。そうならないように努力はしますよ。他の俳優さんたちとも、たくさん話し合いました。4人でうまく終わらせようと、神経を使いました。俳優たちの間では最善を尽くしたエンディングだったと思います。」
ヨン・ジョンフンは今作を通じて、悪役としての演技を大衆にしっかりと見せただけでなく、共演した俳優たちとの友情という大切なものを得ていた。
「悪役をしてみると、感情を極大化させる部分が多いので、以前に演じていたキャラクターよりも感情をたくさん引き出すことができました。僕がここまで恐ろしく見せることもできるのか、と思ったのですが、周りの人が引っ張ってくれて新たな面をたくさん見つけられたんです。他の俳優さんたちが、本当にうまくやってくれたので、シナジー効果をたくさん得られました。少し前にチュ・ジフンさんと焼酎の飲んだんですが、彼は『今までの作品の中で、内容とは関係なくすごくチームワークが良かった。俳優人生において最高のチームだったと思う。こんなふうに感じたことはなかった』と言っていたんですよ。共演した一員として、そんなふうに言われてうれしかったです。スエさんも同じようなことを言っていました。4人がすごく合っていたし、楽しい時間でした。」
ドラマ「仮面」は、韓国では7月30日に幕を下ろした。いろいろ問題の多い作品だったが、俳優たちの熱演で良い成果を得て、有終の美を飾ることができた。
「『仮面』は僕には余韻が長く続いています。他の方が結末に対して、どう思っているのか気になります。実際に演じながら、こんなふうに結末を出したのは初めてのように思います。悪魔で始まり、結局懺悔をすることが多かったですが、こうして地上波ではあまり見られないエンディングを撮って、心が痛みました。心残りはいつもありますが、それより心にじーんときました。今後の俳優人生において、楽しい作品の一つとして残ると思うし、俳優さんやスタッフの皆さんに心から感謝しています。放送終了のパーティーの時に『脚本家のチェ・ホチョルさんがロマンスを書かず、アクションや他のシナリオをくれたら、やる気持ちはある』と話したんですよ。」
WOW!korea提供