「インタビュー」女優ハン・ヒョジュ、“俳優21人の彼女”になる資格

 

「見えないものの方が見えるものよりも大事だと思います。」

映画「ビューティー・インサイド」のイス(ハン・ヒョジュ)は、寝て起きると毎日顔が変わってしまう男性ウジンを愛してしまう。ウジンは寝て起きると、人種や性別、年齢に関係なく見かけが変わり、イスはそんなウジンの内面だけを見て愛そうとするが、決して簡単なことではなく、深く苦悩する。結局イスは現実に耐えられず、精神科で治療を受けることになる。

女優ハン・ヒョジュが演じたイスは、だから特別なのだ。計123人のウジンに愛された女性として、ハン・ヒョジュは21人の主な俳優と共演し、13人の俳優とキスをした。それも本作のシナリオを受け取った時に「第一印象が新鮮だった」とし、「うまく作れれば新たなロマンス映画になりそうだと思った」という。

確かにイスの役は、女優であれば誰もが演じたくなるキャラクターだった。ハン・ヒョジュは自ら「なぜ私だったのかしら」とクールに笑いながら聞き返した。さらに「以前、ドラマ『華麗なる遺産』を撮っていた時に、CM撮影があったが、ペク・ジョンヨル監督に会った際に、つらい現場に耐えられそうに見えて提案されたようだ」とぼんやりと見当づけたことを話すと再び笑って見せた。

ハン・ヒョジュがイスの役に適役だというのは、すぐに納得できる。劇中ハン・ヒョジュは、まるでイスになったようにウジンの感情をそのまま受け取り、自然に反応するからだ。ファンタジーにもかかわらず、イスが苦悩する日常に現実味がある理由も、ハン・ヒョジュがキャラクターに違和感ないように溶け込んだおかげでもある。

実際にもイスはハン・ヒョジュとの接点が多いキャラクターでもあった。「見えるものより見えないものの方が大事」であり、「イスを演じながら21人の俳優からの愛が少しずつ積み重なって、気持ちが温かくなる感じ」になったという。誰よりもイスが「先に相手に聞く配慮が深い女性」だと解釈した。だからハン・ヒョジュは「俳優21人の彼女」になる資格を持った唯一の女優だったのではないだろうか。

Q.本作はこれまでに見たことがないようなファンタジーな設定で興味深いものですが、なぜ自分が女性主人公に選ばれたのかと思いませんでしたか?
なぜ私だったのかしら?(笑)そうですね…監督から連絡をいただいたんですが、絶対一緒にやりたいとおっしゃったんです。以前、監督とは化粧品のCMでご一緒して、お会いしたことはあるんです。その時に女優としての印象が強く残って提案してくださったようです。当時はドラマ「華麗なる遺産」を徹夜で撮影してからCM撮影に向かったんですが、一睡もせずに一生懸命に取り組む姿を高く評価してくださったのではないかと思います。ハハハ(笑)。つらい現場をよく耐えているように見えたようですね。

Q.今回は役柄としても挑戦的なものだし、監督自身も初の長編作でさらにファンタジーを説得力があるように描かなければならないものでしたが、演じるにあたって心配はありませんでしたか?
監督はCMの方を長くやっていらした方なので、きれいな映画になるだろうと確信していました。もちろんCMは15秒の芸術であり、映画は2時間のストーリーだから、方向性を失わずにいけるかという心配はありました。序盤では人物の感情について話すのが、若干足りないようにも思いました。しかしそれをすぐに適応して吸収してくださったので、信じてお任せしました。初めて作った映画にもかかわらず、信条を持って演出してくださり、監督のカラーがうまく出ていると思います。

Q.毎日顔が変わる男性を愛さなければならないイスをどのように分析して表現しようと思いましたか?
私も撮影時にイスの気持ちだった気がします。イスをよく理解できたし、うまく同化できたように思います。最初始める時は、ファンタジーなので計算された演技が必要だと思っていたのですが、実際に撮影に入ったら、感情が自然にこみあげてきました。幸い、シーンも順番に撮ったので、私のことのように、私の体のように感じるくらいに入り込んでしまいました。私自身が本当に感じなければ、見ている人にも本当のように思わないのではないでしょうか。ファンタジーであるほど、より一層そのような気持ちで演じなければ、観客を説得できないことですから。本気の力を信じていくことにしました。

Q.イスが見せるロマンスは、相手の俳優によって違うように感じましたが、それは自然の流れなのでしょうか?
今作でイスを演じる時は、本当にぱーっと開いて演じようと思いました。どの俳優さんが来るかによって。この俳優さんならこうしなきゃというのはありませんでした。イスという人物が映画ですることもストーリーを引っ張っていくのではなく、男性主人公の話を聞いてあげる立場だと思ったんです。受け入れて聞いてあげる相手だったので、現場でも顔を合わせると演技をしようとしました。だから現場の雰囲気がよく生かされたシーンが多かったです。ウジンがイスをなぜ愛したのかを振り返ってみると、イスは家具を売る女性だけど、家具を買う人に家具の話を重点的にするのではなく、人に対してよく質問する人物だったのではないかと思います。人間的な配慮がある女性だったし、親切で穏やかな話し方と飾らない声がウジンの心を動かしたのではないでしょうか。

Q.ウジン役の俳優と共演して感じたことは何ですか?
映画というのは、みんなが一緒に作っていくものだということを今更ながら感じました。シナジー効果を感じたように思います。多くの俳優さんたちにとって、ウジンというキャラクターは難しかったはずです。私がウジンなら難しかったから。少しいたと思ったら、すぐにいなくなってしまうけど、悩んだ痕跡が現場で多く見えました。この俳優さんがどれだけ悩んできたのか、心でうまく伝えられるので、ありがたいという気持ちが大きいです。

Q.イスにとっても、ハン・ヒョジュにとっても一番記憶に残るウジンは誰ですか?
パク・ソジュンさんの時ではないでしょうか。ほかの俳優さんと順序が変わっていたら、違ったかもしれませんが(笑)。十分に恋に落ちるほど気持ちを開いてくれたように思います。だからイスにはパク・ソジュンさんの顔がウジンの姿として記憶されているのではないでしょうか。とにかく最初に会って、恋に落ちるきっかけだから、あのような姿だったらいいと思ったりしたので。

 

Q.ご自身も映画のメッセージのように「見えるものより見えないものの方が大事だ」と思うことはありますか?
今回撮影しながら、自分自身に多く問いかけました。私も見える姿より見えないもののほうが大事だと日頃思ってきたけど、これについてもっと考えるようになった気がします。実際に見えるものより見えないところにあるものの方が、はるかに大事な時が多いです。自分自身も人の内面にあるものが何か、観察しようと努力するほうです。もちろん悪いことを言う人がいた時、悩み苦しむこともあります。本当に悪いことを言いたくて言ったのか、反対にいいことを言う時も本当にそう言いたくて言ったのか、考える時もあります。私は見えるものだけではなく、中にあるものを観察しようとする方だと思います。

20150905-hhj-5Q.だからペク・ジョンヨル監督もイスとハン・ヒョジュさんの接点が多いと言ったんですね。
ハハハ(笑)。ほかの俳優さんたちがウジンとして演じる時に本当にその人を愛したように思います。なじみが薄いんですが、短い時間でもその瞬間は本当に好きでした(笑)。気持ちが少しずつ積み重なって、温かくなる感じがしたんですよ。急に誰でも愛せそうな気がしたんです。

Q.キャラクターに影響される俳優さんも多いが、ハン・ヒョジュさんもそうですか?
多く影響されるんですが、日常まで混同はしません。撮影期間は最大限キャラクターになるため努力していると、何か月間は影響を受けますが、撮影が終わるとすぐに抜け出せるタイプです。

Q.女優生活の中でつらかった時期はありましたか?
これまでの女優生活で、演技が私を苦しめたし、楽しくもしてくれました。振り返ると、私は演技への欲が多いと思います。演技ができない時や、キャラクターがうまくつかめない時は、すごくつらかったです。キャラクターがつかめると楽しいし(笑)。それが演技なのだと思います。ドラマ「トンイ」が終わった時は、精神的に疲れてしまったんですが、ムン・スクさんとはその時に縁がありました。あの時にとても温かく受け入れてくださって、今作までご一緒できてうれしいです。

Q.ハン・ヒョジュさんが挑戦する多様なスペクトラムに対するファンの期待が大きいです。ロマンス以外のジャンルで活躍する姿も期待していいですよね?
この仕事を始めた時は、うまく演じたいという考えよりは、何でもうまくやりたいと思っていました。単純に私にくださるものを、うまくやりたいという主義でした。学生時代は勉強を一生懸命にやって褒められたかったし、父と母にはいつも愛される娘でいたかったんです。いつもそう思っていました。そんな逆らうことのない考えだったので、後になって本当に演技をうまくやりたいという気持ちを持つようになりました。今後も機会をいただければ、何でもやってみたいです。新しいことに挑戦するのは好きだから。

WOW!korea提供

2015.09.05