韓国の各都市を訪ねればすぐにわかりますが、街の中に仏教寺院がほとんどありません。目立つのはキリスト教の教会ばかりです。しかし、韓国では仏教を熱心に信仰している人がたくさんいます。それなのに、なぜ街中にお寺がないのでしょうか。
歴史的な背景
韓国で街中にお寺がないのは、1392年から1910年まで続いた朝鮮王朝時代に仏教が迫害された名残です。
当時、お寺は市街地から追放され、山中に移されました。その影響で、現在も多くの仏教寺院が山の中にあります。
もともと、朝鮮王朝は儒教に精通した新進気鋭の学者たちが作った王朝と言っても過言ではありません。実際、初代王となった太祖(テジョ)は儒教学者を重用し、彼らは重要な側近として王朝の基盤づくりに励みました。
だからといって、王朝創設の当初は仏教を迫害するほど目の敵にはしていませんでした。太祖は仏教を信仰していましたし、国教として儒教を崇拝するようになっても、仏教を信仰することは認められていました。
風向きがガラリと変わったのは3代王・太宗(テジョン)の治世になってからです。彼は、高麗王朝が堕落したのは仏教寺院が強大な力を持ちすぎて政治に介入したからだと見なし、仏教の抑圧に動きます。
それでも、太祖が生きている間は父に気兼ねして露骨に仏教を排斥しませんでしたが、1408年に太祖が世を去ると、太宗は仏教を弾圧します。そのあおりで、仏教寺院は山中に追放されました。
それでも、朝鮮王朝時代を通じて仏教は生き残ります。王族の中でも、意外と仏教を信仰している人が多かったのです。
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コラム:ロコレ提供