襲われた金宗瑞
1453年に起きたのが癸酉靖難(ケユジョンナン)というクーデターだ。これは、首陽大君が金宗瑞を襲うという事件だった。
まず、首陽大君は従者を2人だけ連れて金宗瑞の屋敷に行くと、金宗瑞の長男が屋敷の正門の前にいた。首陽大君は「金宗瑞殿を呼んできてほしい」と依頼する。長男が門の中に入ったあと、しばらくして金宗瑞が門から現れた。
彼は「どうぞ、中へお入りください」と首陽大君に言うが、首陽大君は門の中に入ったら殺されるかもしれないと警戒し、屋敷に入らなかった。
そのうえで、首陽大君は紗帽(サモ/セミの羽のような角が後ろに2つ付いた冠)の角が1つ取れていたことに気づき、「角を1つ貸してほしい」と頼む。
金宗瑞が長男に「持ってまいれ」と命令し、長男が門の中に入っていく。これによって、金宗瑞は1人になった。すかさず、首陽大君は金宗瑞に「読んでほしい書状があります」と言って、書状を渡す。受け取った金宗瑞が読もうとしたが、すでに日没後で暗くて読めなかった。
金宗瑞は月明りで読もうと思い、書状を月に照らすように掲げた。その瞬間を捉えて首陽大君が合図すると、従者が隠し持っていた鉄槌を取り出して、金宗瑞をめがけて振り降ろした。
倒れこんだ金宗瑞。そこに、紗帽の角を持った長男が戻ってきて、「父上!」と絶叫して金宗瑞に駆け寄る。すると、もう1人の従者が隠し持っていた刀を取り出して、長男に切りつけた。
かくして、金宗瑞は首陽大君によって排除されてしまった。
(第4回に続く)
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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