2大勢力の対立
欽明天皇や側近の者たちは金色に輝く釈迦像を見て感動した。
それでも、欽明天皇は慎重に言葉を選んだ。
「余は今までこのような法を聞いていなかったのだが……。ここに集まった諸臣たちよ、西からもたらされた仏は、いまだ見たことがないほど端麗の美をそなえているが、果たしてこれを祀るべきかどうか」
欽明天皇は側近たちに意見を求めた。
すぐに口を開いたのが蘇我稲目(そがのいなめ)だった。
「西の国々ではどこも礼拝しています。我が国だけが、どうして知らないままで済ませられるでしょうか」
賛成する蘇我稲目に異議を唱えたのは物部尾輿(もののべのおこし)である。
「帝が世の主としてあられるのは、この地の神を春夏秋冬に祀られておられるからです。外来の神を拝むことになりますと、我が神のお怒りを受けることになりかねません」
政権を支える2大勢力の意見が真っ向から対立した。
一方、朝鮮半島でも百済が新羅に裏切られて苦境に陥った。局面を打開しようと聖王は新羅を攻めたが、逆に捕虜になって処刑されてしまった。日本に仏教を伝えた聖王の最期はあまりに無惨だった。
(次回に続く)
文=康 熙奉(カン ヒボン)