「イベントレポ」キム・ヒエからビデオメッセージも!中村優子さん「生涯の一本」で声震わせ舞台挨拶 韓国映画『ユンヒへ』

韓国映画『ユンヒへ』

2020年 青龍映画賞 2冠(監督賞、脚本賞 受賞)
2020年 韓国映画評論家協会賞 4冠(脚本賞、監督賞、音楽賞 受賞/ベスト映画10選出)
2019年 釜山国際映画祭 クロージング作品、クィア・カメリア賞(独立賞)受賞

韓国から小樽へ―降り積もる雪の下に隠されていたのは、20年前に閉じこめた記憶
11もの映画賞を受賞し、世界中で絶賛されたラブストーリー
「ユンヒへ、あなたと出会ったから、私は自分が誰なのか知ることができた」

「私は私である、あなたはあなたである…
それを体の真ん中に置いて生きていきたい」
中村優子さん「生涯の一本」 声震わせ舞台挨拶
1/8(土)舞台挨拶実施のご報告

 

2019年、第24回釜山国際映画祭のクロージングを飾り、2020年には韓国のアカデミー賞ともいえる青龍映画賞で最優秀監督賞と脚本賞をW受賞した話題の韓国映画『ユンヒへ』が、1月7日(金)よりシネマート新宿ほか全国公開中。
本作は、韓国の地方都市で暮らすシングルマザーのユンヒが、長い間、連絡を絶っていた初恋の女性から一通の手紙を受け取ったことから始まるラブストーリー。母の手紙を盗み見てしまった高校生の娘セボムは、自分の知らない母の姿をそこに見つけ、手紙の差出人である日本人女性ジュンに会わせようと決心をする。セボムに強引に誘われるかたちで、ジュンが暮らす北海道・小樽へ旅立つユンヒ。一方、小樽で伯母とささやかに暮らすジュンは、ユンヒが自分の書いた手紙を受け取り、小樽に来ていることを知らずにいた――  東アジアにおける中年女性たちの同性愛と、彼女たちが経験してきた抑圧を真摯に描き出し、多くの映画ファンや評論家たちから高い評価を受けた注目作がついに日本公開。

 

1月8日(土)に、日本人女性ジュンを演じた中村優子さんと、ジュンの親戚であるリュウスケを演じた薬丸翔さんが舞台挨拶を行いました。
映画公開日となった1月7日は中村さんの誕生日。本作を「生涯の一本」と語り、これまで韓国におけるプロモーション活動に積極的に参加してきた中村さんですが、日本の観客の前で本作について語るのはこれが初めてとなりました。また、この舞台挨拶のためにユンヒ役で共演した韓国のトップ俳優のひとりであるキム・ヒエさんと、本作のイム・デヒョン監督からそれぞれビデオメッセージも寄せられました。

■日時: 1月8日(土):14:05~14:30
■場所: シネマート新宿 スクリーン1
■登壇者:中村優子(ジュン役)、薬丸翔(リュウスケ役)

中村さんは、「本日は劇場まで『ユンヒへ』に会いにお越しくださり、本当にありがとうございます」とあいさつ。続けて、声を震わせながら「こうして、ようやくスクリーンを背にして観客の皆さんとお会いできる日を、ずっと待っていました。今こうしてやっと夢の時間にたどり着いて、蘇ってくるのは、撮影でのユンヒとの再会の場面です。あの時は、ジュンとしても役者としても待ち望んだ瞬間でした。同時に、その時間を少しでも長く留めていたくて、“わざとNG出そうかな”と脳裏をかすめたことを思い出しました。今日は時間を引き延ばすことはできないので、この景色を脳裏に焼き付けたいと思います」と想いを打ち明けた。薬丸さんは「今日はお越しいただきありがとうございます。撮影は3年前で、僕らの記憶も少し薄れるぐらいの時間が経ってしまいました。でも、追い風が吹くように一昨日初雪が降って、この映画にとってはいいスタートダッシュを切れる結果になり、感慨深いものがあります」とあいさつ。

本作に出演することになった経緯について、中村さんは「候補の段階で準備稿をいただいたんです。それを拝見してラブレターを読んだような気持ちになりました。こんなに誠実な眼差しの脚本って今まであっただろうか…と。人がその人らしく生きていくことに対する真摯な眼差しに胸を打たれて、私もラブレターの返事を出すように、いてもたってもいられなくて、“ぜひやらせてください、強い情熱を持って挑みたいです”とすぐにお返事させていただきました」と振り返る。薬丸さんは、「僕は撮影の直前にお話しをいただいたんですが、木野花さん(ジュンの伯母マサコ役)のマネージャーさんが、“いい人がいるよ”と僕を推薦してくれたんです。ここまで人と人との繋がりの中で仕事が決まったことが今までなかったので、すごく縁というものを感じました」と明かす。
劇中、親戚であるジュンとリュウスケは、ジュンの父が亡くなった葬式後に一緒にお墓に行った帰りのささいな会話からぎこちない雰囲気になってしまう。演じた役柄について、リュウスケを演じた薬丸さんは「リュウスケってすごく空気を読めないヤツだなぁ…と(笑)」と感じていたことを振り返る。一方、ジュンを演じた中村さんは「環境や経験ゆえに警戒心が強くて繊細で、孤独な人物であると。でも同時に弱い人間ではなく、すごく強く、自立した人間であってほしいと監督に言われていました」と振り返る。さらに「その自立した強さを持っているのが強く出てくるのは、リュウスケと対面した時に格段の違いを見せてほしいと言われていました(笑)」と明かす。
小樽でのロケを振り返り、中村さんは「生まれて初めてホワイトアウトを経験しました。そのお墓参りのシーンです」と振り返る。薬丸さんは、それを受けて「ロケバスで現場まで向かう時に、ホテルから向いの民家が見えないほどだったんです。こんなに雪が降ることってあるんだ…というぐらいでした」と振り返る。
韓国のスタッフと日本のスタッフが入り混じっての撮影となった。韓国の撮影スタイルの感想について、薬丸さんは、「一番驚いたのは、台本とは別に、絵コンテの本が配られたことです。最初から最後まで全部こういうカットで撮りますという、まさに絵コンテ本です。日本ではそんなことないし、絵コンテ自体俳優に渡されることがないのが主なので・・・」と振り返る。中村さんは「韓国と日本それぞれのスタッフさんたちが、それぞれ逆の言葉を使うのが流行ったんです。日本側で流行ったのは、監督の”ハンボンドン(日本語で「もう一回」の意味)”です。監督の口癖だったんです。ニコニコしながら“もう一回、もう一回”って(笑)」と語り、韓国側では日本語の挨拶などが流行ったという。さらに、撮影中のエピソードとして中村さんはキム・ヒエさんから「カイロ何個貼ってるの?」と聞かれたそうで、6個であると答えたところ、「6個?私は10個よ!」と言われたことを明かす。このエピソードには、思わず会場から笑いがこぼれた。

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イム・デヒョン監督は、本作の日本公開に向けてインタビューを精力的にこなし、来日を切望していたが、コロナのために断然。そんな監督からビデオメッセージが到着し、場内で紹介された。「本当は日本での公開を記念して直接会ってご挨拶をしたかったのですが、コロナのため日本へ行くことができません。このような時期に劇場に来てくださって心から感謝します。もうすぐ訪れる春が皆さんにとって良い季節になることを遠くから祈っています」などとメッセージを寄せた。そんな監督との思い出について、中村さんは「日本の撮影に入る前に、小樽の神社で成功祈願の昇殿参拝をしたんですが、すごい雪が降り積もっていて、神社の前の狛犬も笑えるぐらいに雪が被っていました。これはあんまりだな…と思って雪を払いのけたんです。そしたらいつの間にか監督が横にいて、”なぜそういうことをやったんですか?”と聞かれて。私は”見えなそうだから”という感じで答えたんですが、後日、撮影の時にマサコ伯母さんがお墓の雪を払うという演出をさりげなく加えていて。狛犬にせよお墓にせよそれを”冷たくないかな”とかそういう想いで守るという意味があると思うんです。監督は、その私の一言と行動だけを見て、すぐにマサコ伯母さんが雪深い自然に対する畏怖をもって生活している動作としてすぐ取り入れる凄さを目の当たりにして、ものすごく印象深かったです」と振り返った。
さらに、主人公ユンヒを演じた韓国のトップ俳優のひとりであるキム・ヒエさんからのビデオメッセージも紹介された。「日本で『ユンヒへ』が公開されて嬉しいです。美しい小樽での撮影は昨日のことのように心の中に大切な思い出として残っています。ジュンとユンヒの物語はどこかで続いていると思います。『ユンヒへ』が皆さんの心に響くことを願っています。いつかジュンに再会できる日を待ちながら」などとコメントを寄せた。

最後に、昨日誕生日ということでスタッフから大きな花束が贈られた中村さんは、「久しぶりにユンヒの顔を見て胸がいっぱいで、本当に忘れがたい時間をありがとうございます。この作品、ジュンの視点を通して私は、彼女たちの愛がいかに自然なものであるかということを体感しました。それは、役者としても人間としてもいただけた、かけがえのないギフトであると確信しています。マイノリティと呼ばれる方々、全ての方が自分を偽ることのない世界になっていくことを祈ります。私は私である、あなたはあなたである・・・そのことを体の真ん中に置いて生きていきたいと思います。今日は本当にありがとうございました」と締めくくった。

(2ページへ続く)

2022.01.09

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