●「変化」と「世襲」
常に変化を迫られる国
韓国ドラマの一つの特徴として「身分上昇」と「人間的成長」を挙げ、そのキーワードは「変化」だと述べました。この変化に対する言葉に「世襲」という用語があります。日本では国会議員の世襲率が上がっています。夫が死んだらその夫人が夫の遺志を継いで国会議員選挙に出馬して当選するのも一種の世襲です。
陶磁器職人、歌舞伎役者、落語家、何百年続く和菓子屋や蕎麦屋など、何代にもわたって受け継がれて行くのが日本の特徴です。親族や有能な人に継がせるなど、その形は違っても代々にわたってその地盤や技を継承します。安定した社会的な背景がなければ不可能なことであり、たとえ小さな店でも誇りをもって受け継ぎ、コツコツと積み上げていく精神が日本人にはあります。
これに比べて韓国は落ち着いて家業や技をコツコツと受け継ぐには、あまりにも社会が不安定でした。朝鮮王朝をとってみましても豊臣秀吉の侵略(一五九二年、一五九七年の文禄・慶長の役)で朝鮮全土が焼土化しましたし、清の二度にわたる侵略(一六二七年、一六三六年)がありました。家業や技術を伸ばすよりも、外国の軍隊から身を守ることのほうが先でした。
庶民の生活には大きく影響のないことですが、三度にわたる王の廃位がありました(六、十、十五代王)。日本でいえば、江戸時代に徳川幕府の将軍が親族や家来からその座を引き摺り下ろされることに相当しますが、日本ではそのような事態はありませんでした。
日本から独立してからも左翼と右翼の思想的対立やソ連とアメリカの覇権争い、その延長線での韓国戦争(朝鮮戦争)、そして独裁政治と四・一九学生革命(一九六〇年)、軍事革命(一九六一年)、八十年代の民主化運動と目まぐるしく「変化」して落ち着く暇がないので、日本のように既得権を積み上げる余裕がありませんでした。安定した社会でそれぞれの持ち場でコツコツ積み上げるには社会の変動が激しく不安定な状態が続き、どのように外圧に対処すべきかに全神経を集中せざるを得なかったのです。そのおかげで瞬発力が養われ外の動きに敏感に対処する能力が発達しました。長いスパンで信用を積み上げるのでなく、目前の危機を乗り越えるノウハウが蓄積されたのです。
文=権鎔大(ゴンヨンデ)
出典=『あなたは本当に「韓国」を知っている?』(著者/権鎔大発行/駿河台出版社)
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