東豆川市のステージのとき、仲間とくつろぐユンホ(写真=B.Park)
現在、兵役の義務を果たすため軍務に就いている東方神起のチョン・ユンホ。「兵役中はその姿を見ることはほとんどなくなるのではないか?」と思っていたが、韓国北部ののどかな楊州(ヤンジュ)市にある第26機械化歩兵師団の軍楽隊所属となり、兵士としての訓練もしながら、地域の行事に参加してMCや歌やダンスで盛り上げたり、軍の行事に招かれたりして活躍している。
将来の可能性を広げる時期
ユンホの知名度から過去の芸能人登用の実績に鑑みての配属だろうが、その才能を2年間埋もらせることがないようにしたことは、非常に賢明な判断だったと思う。陸軍内だけでなく様々な重要な行事に招待されているのを見れば、ユンホのステージのレベルの高さは、軍が思っていた以上だったのかもしれない。しっかりと結果を出してまた次の招待へとつながっているようである。
ユンホのように10年以上も芸能界のトップを走っていると、2年くらい表舞台から遠ざかっていたとしても、舞台の勘はすぐ取り戻せるのかもしれないが、それでもステージに立ち続けることは大事なことだ。
軍楽隊に所属する方々は、それぞれの専門にかなり精通していると聞く。実際、軍楽隊の演奏を見てみれば、プロとの境目が分からないほどの素晴らしさだ。
今は、そのような仲間と協力し合い影響し合い、お互いを尊重しながら選曲やアレンジ、ダンスの振り付け、様々に試行錯誤しながら、東方神起として経験したものとはまた別の創作過程を経験できていることだろう。それは、何よりも将来のユンホの可能性の裾野をますます広く大きくしていくはずだ。
入隊後初めてのソロステージ
ユンホから目が離せないと思うようになったきっかけの一つが、昨年11月3日の『龍仁(ヨンイン)市民と共にする軍楽演奏会』で、入隊後初めてのソロステージを見たことだった。
その2日前まで週末に楊州市とさらに北にある東豆川(トンドゥチョン)市で、ユンホが出演した野外公演が続けてあり、日程的に難しかったのか、チケットを手に入れるハードルが少々高かったためか、渡韓していたほとんどの日本人のファンが帰ってしまったのは非常に惜しいことだった。
入隊してから今まで見てきたユンホのソロは、その一つ一つが貴重なものだが、龍仁のそれは初めてということもあるし、今までに経験のない感覚を味わったことで、特に忘れられないステージになった。
会場となった龍仁ポウンアートホールは、ソウルから電車で1時間ほどのところにあった。
会場では、前方には若い兵士が座り、その後ろに龍仁市民など一般の方、さらに後方に徹夜組もいたという列に並んで当日券を手に入れたファン、大まかには大体そのように座って、演奏会を楽しんでいた。
鳥肌が立った瞬間!
ユンホの出演する直前はセクシーな女性の出演者が、長い手足を惜しげもなく露出させて男性を誘うようなダンスをしていて、少し目のやり場に困った。兵士の皆さんは大いに盛り上がっていた。そして、その興奮をまだ観客席が引きずっているうちにユンホの出番がきた。
「一体、このピンクに染まったような空気の中、どんな展開になるのか?」
と、少々不安な思いで見守っていた。
暗闇にユンホとダンサー4人が速足で入場してほぼ中央の位置についた。そして『WHY?』の前奏が流れ、ダンサーの間からスポットライトに照らされてユンホが颯爽と現れたその瞬間、まさに一瞬にしてその空気ははっきりと凛としたものに変わった。鳥肌が立った。
兵士の皆さんの顔を見ることはできなかったが、明らかに一瞬「おっ?」というような間があった。
それを境に、さっきまでとは違う種類の興奮が沸き起こったのが分かった。
ファンが初めて見るソロの『WHY?』や『MIROTIC』に興奮するのは分かる。後ろからはファンの大きな声援と押されるような圧力を感じた。
しかし、それと同じか、それ以上のエネルギーが前からも押し寄せた。
強い思いが激流のように
先ほども書いたが、前方に座っているのはファンではない。おそらくほとんど全員がユンホのステージを初めて見る兵士の方々だ。さっきまで若くて綺麗な女性のセクシーなダンスに「ヒュー、ヒュー!」と言っていたのが、今は「ユーノユンホ!」と太い声で全力で掛け声もしている。
公演が演者と観客が一体になって完成するものだとしたら、この時の完成度は並外れていたと思う。ステージのユンホから何かが観客に向けて広がり、そこに集う全ての人の魂を一つに束ねたような感覚と言ったら、大袈裟だろうか?
あの時の感覚はなかなか言葉には表現ができない。ユンホがステージで歌い踊る間、波のように押し寄せる何かに鳥肌が立ち続けていた。
息をするのも忘れていたような気がする。様々な海外、国内のアーティストのコンサートを見てきたが、あの感覚は初めてだった。
あの時感じたエネルギーは一体何だったのか?
もしかしたら、兵士として厳しい規律の中で生活しながら、ユンホの中で堰き止められていた「ステージに立ちたい!表現したい!」という強い思いが激流のようにあふれ出ていたのかもしれない。
この龍仁のステージはユンホにも何かしら感じるものがあったと思う。それが何かは本人のみ知ることだが、この時、「頼りがいのあるかっこいいモンスター」に向けて加速度が増したのは間違いない。
文=M.Takahata
コラム提供:ロコレ
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