「コラム」”父の日”に見たい珠玉の名作「国際市場で逢いましょう」【映画評】

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韓国の主要映画賞を総なめ!

今年は空梅雨と言われながらも、天は時折、きちんと恵みの雨を降らせてくれていますね。

6月も半ばを過ぎ、第3日曜日は父の日です。

大切なお父さんへの贈り物を何にしようかと考えている人も多いのではないでしょうか。

韓国ドラマや映画にも父と子をテーマにした作品が数多くありますが、今日はその中でファン・ジョンミン主演『国際市場で逢いましょう』をご紹介します。

ユンホ(東方神起)も出演しているということでご覧になられた方も多いことと思いますが、父の日を前に、もう一度この素晴らしい作品に思いを馳せてみましょう。

この作品は2014年に韓国で公開された映画です。朝鮮戦争やベトナム戦争といった激動の時代を生き抜いた一人の男の生涯を描いた作品で、第52回大鐘賞では作品賞を始め10部門を受賞し、観客動員数は『王になった男』を抜いて1300万人を突破したと言われています。

家族を守る父の姿に涙

1950年、戦時の混乱の中で、主人公のドクス(ファン・ジョンミン)は父(チョン・ジュニョン)と末の妹と生き別れになってしまいます。父親から「もし、自分がいなくなったら家長としてお前が家族を守るんだぞ」と言われたドクスはその言葉を胸に刻みながら生きていきます。

自分を犠牲にして家族を守り続けるドクスは、弟の学費を工面するため、ドイツに炭鉱労働者として働きに出ることになりますが、過酷な労働の中で1つの愛をみつけ結婚します。幸せな結婚生活も束の間、今度は末の妹の結婚資金などを工面するため、ベトナム戦争に出稼ぎに行くことになり……。

ドクスは、ベトナムで爆風に飛ばされ意識が朦朧となりながら妻ヨンジャ(キム・ユンジン)に心の中で次にように語り掛けます。

「ヨンジャ…つらい時代に生まれ、この苦しみを味わったのが子供たちじゃなく僕たちで本当によかった。ヨンジャ…こう考えてみないか。『あの悲惨な朝鮮戦争を僕らの子が経験したら?』『ドイツのあの過酷な炭鉱で子供たちが働いたら?』『ベトナムの戦場に子供たちが出稼ぎに来たとしたら?』。何も起こらないことが一番いいけれど、この苦痛を味わったのが子供たちじゃなくて僕たちで本当によかった」

いつの時代も父親というのは、こういうものなのですね。

自分を犠牲にして家族を守る、それが父親なのです。こうして昔から世の男たちは時代を作ってきました。今のような暮らしやすい時代があるのは、先人たちが多くの苦労を重ねて今の世の中を作ってくれたのだということも忘れてはならないと思います。

父へ伝えたい心からの「ありがとう」

ドクスと父親(チョン・ジュニョン)との回想シーンには号泣必至です。父親であるドクスの思いと、息子としてのドクスの思いが胸に刺さり、母親のような気持で抱きしめてあげたくなってしまいます。父親の献身、家族の愛は万国共通のものです。韓国で大ヒットしたのも大いに頷けますが、日本人が見ても素直に心に響いてくる作品です。

ファン・ジョンミンといえば、ドラマ「アクシンデント・カップル」のク・ドンベク役が最も印象に残っていますが、この映画も彼の魅力が満載で“良い人”を演じさせたら本当にいい味を出す俳優なのだとこの作品で再確認しました。

父の日を目前にして、この映画を家族で鑑賞するのもいいのではないでしょうか。

家族に辛さや弱さは見せないけれど、世のお父さんはがんばっているのです。

もちろん、そんな父親ばかりではないかもしれません。

でも、自分にとってどのような父親であろうとも、自分が今この世に存在しているのは、

紛れもなく“その人”がいたからこそ。

それだけは紛れもない真実です。

『国際市場で逢いましょう』は激動の時代を家族のために懸命に働いた一人の男の物語です。

父の日には大切なお父さんに感謝の言葉を贈りましょう。

もしも、もう伝えることができないほど遠く離れてしまっているのなら、心の中で感謝の気持ちを念じてみませんか。

人の想いは時空を越えて、必ず届くものなのです。

お父さん、ありがとう。

文=朋 道佳
コラム提供:ロコレ
http://syukakusha.com/

2016.06.19