【Movie NOW+】釜山の青春映画がブラジルでも大人気…Netflixが変えた韓国映画の“世界への届け方”

韓国・プサン(釜山)を舞台にした青春映画が、遠く離れたブラジルやコロンビアでも愛される。一方、これまで映画祭でしか出会えなかった短編映画には、数千人の観客が触れ、1000件以上の意見が寄せられる。NetflixをはじめとするOTT(動画配信サービス)の普及によって、韓国映画の流通環境が変わり、制作者たちに新たな機会が生まれている。

その変化は、単に作品が世界中で視聴されるようになったというだけではない。映画館や映画祭を中心としていた観客との出会い方にも、新しい可能性が広がっている。

10日、プサンの東西大学センタムキャンパスで開催された「クリエイティブ・アジア2026(Creative Asia 2026)」では、Netflix映画「告白ヒストリー」を手掛けたナムグン・ソン監督と、短編映画「ソニおばさん」の共同監督ウィ・ウンギョン、ソン・グァンミンが登壇。OTTを通じて経験した観客層の広がりや、映画の制作・流通環境の変化について語った。

同イベントは、釜山国際映画祭とNetflixが共同で実施する次世代クリエイター育成プログラムで、今年で3年目を迎えた。3人は釜山国際映画祭のチョン・ジヘプログラマーが進行する対談「映画演出の新たな声、その次は」に参加した。

■釜山の物語が世界でヒット…監督も驚いた反響

特に注目を集めたのは、「告白ヒストリー」のナムグン・ソン監督が明かした世界的な反響だった。

「告白ヒストリー」は、1998年のプサンを舞台に、若者たちの恋愛と成長を描いた作品。配信開始から2週目となる2025年9月第1週、Netflixのグローバルトップ10(非英語映画部門)で1位を獲得し、6週連続でトップ10入りを果たした。

韓国の一都市を舞台にした青春映画が、言語や文化の異なる国々でも視聴された。その反響は、監督自身にとっても驚きだったという。

ナムグン・ソン監督は「ブラジルやポーランド、コロンビアにいる友人たちから連絡が来ました。現地でも映画が人気だという話でした」と振り返り、「多くの国で1位になり、グローバルトップ10にも6週間以上入っていました」と語った。

続けて「韓国語で作られた、本当に韓国の釜山の物語です。非常にローカルな話なのに、これほど多くの人に愛してもらえたことは誇らしくもありますが、何より不思議でした」と率直な思いを明かした。

釜山という地域に根差した物語が、ブラジルやポーランド、コロンビアの観客にも届いた。監督が語った経験は、地域色の強い作品であっても、配信を通じて世界中の観客と出会えることを示している。

■映画館で会えなくても…世界中の観客とつながった「お祭りのような経験」

世界的なヒットとともに、ナムグン・ソン監督が印象深く振り返ったのは、観客との新しいつながり方だった。

映画館での上映であれば、監督や俳優は観客と同じ空間で作品を見ながら、その反応を直接感じることができる。しかし、Netflixでの配信では、そうした体験を得ることができなかったという。

監督は「映画館では俳優と観客が一緒に泣いたり笑ったりする経験ができますが、今回はそれができませんでした」と明かした。

ところが、配信が始まると、別の形で観客の存在を実感することになった。

「実際に公開されてみると、世界中の人々が同時に映画を見て、SNSで一緒に語り合っていました。まるでお祭りのような経験でした」

同じ映画を見た人々が、国境を越えてSNSで感想を共有する。映画館で直接観客に会うことはできなくても、配信だからこそ生まれる一体感があった。

監督の言葉からは、OTTが単なる上映手段ではなく、作品を介して世界中の観客がつながる場にもなっていることが伝わってくる。

■初の商業映画でも「創作の自由は保障された」

「告白ヒストリー」は、ナムグン・ソン監督にとって初の商業映画でもある。

これまで監督は、独立・芸術映画「10か月の未来」「力を出す時間」を手掛けてきた。以前の作品では社会的に鋭い問題を扱ってきたが、今回は観客に楽しさを届ける作品を作りたいと考えていたという。

監督は「世の中に楽しさがあってほしいし、自分も楽しいものを見つけたいと思っていた時に提案を受けました」と制作のきっかけを説明。「観客を心地よくさせる映画として取り組めばいいと思いました」と語った。

独立映画から商業映画へ。制作規模が大きく変わることで、現場の進め方にも大きな違いが生まれると思っていたが、実際にはそうではなかったという。

「初めての商業映画だったので、多くのことが変わると思っていましたが、規模を除けば大きな違いはありませんでした」

さらに「多くの支援を受けながらも、チーム内では創作の自由が保障され、柔軟に制作を進めることができました」と説明した。

世界中に作品を届ける大規模なプラットフォームでの制作でありながら、創作の自由を保つことができた。監督にとって「告白ヒストリー」は、観客との出会い方だけでなく、制作環境についても新たな経験となった。

■15人ほどの反応から7000~8000人の視聴へ…短編映画にも変化

OTTがもたらした変化は、長編映画だけのものではない。これまで映画祭が主な発表の場だった短編映画にも、より多くの観客と出会う機会が生まれている。

今年のミジャンセン短編映画祭で3冠を獲得した「ソニおばさん」は、ペットトリマーとして働きながら捨て犬の世話をするおばの家に、10年前に彼女が育てたおいが訪ねてくる1日を描いた24分の短編映画だ。

ウィ・ウンギョン監督とソン・グァンミン監督が共同で演出し、ウィ監督自身が主演も務めた。

ウィ監督は、実際に自分を育ててくれたおばとの経験から作品を構想したという。

「久しぶりに訪ねたおばが捨て犬の世話をしていたのですが、犬がおばを母親のように慕う姿を見て、特別な感情を抱きました」

その後、近所の動物病院で犬を自分の子どものように扱うペットトリマーを見て、おばのことを思い出したと明かした。

共同監督を務めた2人は夫婦でもある。ウィ監督が主演を務めたため、撮影現場では主にソン監督が演出を担当し、ウィ監督はポストプロダクションを担当する形で役割を分担した。

そんな2人にとって、Netflixでの公開は観客との距離を大きく変える出来事となった。

ソン監督は「以前の映画では15人ほどの反応に触れる程度でしたが、今回は7000~8000人に見ていただき、1000件以上の意見にも接することができました」と明かした。

続けて「映画を見た観客が何を考えているのかを聞くことは、制作者にとって非常に重要です。Netflixのおかげで、そのような機会が生まれました」と語った。

作品を届けるだけではない。実際に映画を見た人々の考えや感想に触れられることも、制作者にとって大きな意味を持っていた。

■劇場ならではの魅力と、配信だからこそ得られたもの

もっとも、短編映画をOTTで公開することに、最初から迷いがなかったわけではない。

ソン監督は「映画館でしか感じられない映像の質感や音響があるので、当初はOTTでの公開を悩みました」と打ち明けた。

映画館という環境で作品を届けることへの思いは、配信によって観客が広がったからといって消えるものではない。

それでも監督は「より多くの観客と出会い、さまざまな意見を聞けたという点で、幸運のような経験でした」と振り返った。

ウィ監督も、短編映画が抱えてきた観客との接点の少なさに言及した。

「短編映画は映画祭に行かなければ接することが難しい場合が多いです」

その上で「家族や知人もNetflixで映画を見て連絡をくれましたし、ほかの人にも気軽に薦められるようになりました」と説明した。

映画祭に足を運ばなければ出会えなかった作品が、配信を通じて身近なものになる。「ソニおばさん」の監督たちが語ったのは、短編映画にとっての新たな可能性だった。

■「良い作品を選んで届ける」映画祭とNetflixの連携が持つ意味

こうした変化について、ナムグン・ソン監督は、映画祭とOTTの連携が単に上映機会を増やす以上の意味を持つと評価した。

今年のミジャンセン短編映画祭で審査員を務めた監督は「今は誰でもYouTubeに自分の映画を公開できる時代ですが、良い作品を選び、観客に紹介することはまた別の問題です」と指摘した。

続けて「映画祭が選んだ作品をNetflixで見せられるという点で、波及力が大きくなりました」と語った。

誰もが作品を公開できる時代だからこそ、数ある作品の中から良い映画を選び、観客に紹介する役割にも意味がある。映画祭が作品を選び、Netflixがより多くの観客に届けるという連携について、監督はその波及力に注目していた。

劇場公開作品、Netflixオリジナル映画、映画祭で上映される短編映画。異なる制作環境を経験してきた3人の監督が共通して語ったのは、観客と出会うことの大切さだった。

1998年の釜山を舞台にした青春映画が世界各国で視聴され、24分の短編映画に数千人の観客が触れる。作品の規模も、描かれる物語も異なるが、そこには映画と観客を結ぶ新しい経路が生まれている。

映画館でしか味わえない体験がある一方、配信だからこそ届く観客もいる。

今回の対談は、OTTが韓国映画の流通を広げるだけでなく、これまで出会うことのなかった作品と観客をつなぐ、新たな役割を担っていることを浮き彫りにした。

WOW!Korea提供

2026.10.11