【コラム】1話5000万円時代へ…韓ドラ制作費高騰、Wavve危機が映す韓国OTT生存競争

韓国OTT(オンライン動画配信サービス)大手のWavve(ウェーブ)が、2026年にオリジナルドラマ制作を事実上中断したと伝えられ、韓国コンテンツ業界に衝撃が広がっている。

一見すると「1社の経営問題」にも見えるニュースだが、実際には韓ドラ業界全体が直面する構造変化を映し出しているとの見方も強い。

韓ドラ人気が世界的に拡大する一方で、なぜOTTはドラマを作れなくなっているのか。Wavveの苦境は、韓国ドラマ業界が迎えた転換点を象徴している。

■ 韓国大手OTT・Wavveに何が起きたのか

WavveはSKテレコムと韓国地上波3社(KBS・MBC・SBS)が共同で設立した韓国OTTだ。地上波ドラマやバラエティを場所や時間に縛られず視聴できる強みを武器に、かつては韓国国内OTT首位の座を長く維持してきた。

しかし近年は存在感が低下。韓国メディアによると、月間利用者数は一時600万人台から380万人台まで減少したという。

特に大きいのは、“オリジナルコンテンツ不足”だ。

かつてOTTは、「独占作品」が最大の武器だった。Netflixが「おつかれさま」や「イカゲーム」で世界市場を席巻し、TVINGが「ユミの細胞たち」シリーズや「乗り換え恋愛」シリーズなど独自IPを育てる中、Wavveはことし2月公開の8部作ミステリーcを最後に、年内のオリジナルドラマ制作を断念したと伝えられている。

韓国業界でも「OTTのオリジナルドラマが年間1本というのは前例のないレベル」と受け止められている。

■ 背景には、制作費高騰がある

韓国ドラマ市場では近年、人気俳優への出演依頼競争が激化。OTT同士が大型作品で差別化を図る中、キャスティング費用も急上昇している。

韓国メディアによると、人気俳優の出演料は1話あたり4億~5億ウォン(約4000万~5000万円)規模に達しているという。さらにドラマ1本の制作費も200億~300億ウォン(約20億~30億円)に膨らみ、中堅OTTには重い負担となっている。

韓ドラ人気はかつてないほど高まっている。それにもかかわらず、制作現場は逆に厳しさを増しているという皮肉な構図だ。

実際、Wavveの2026年ラインナップを見ると、「21世紀の大君夫人」(MBC)、「二度目の裁判」(MBC)、「君がきらめく季節に」(MBC)など、地上波供給作品が中心を占める。独自制作というより、地上波配信プラットフォームとしての色合いが強まっている。

■ “見逃し配信”だけでは勝てない時代へ

これは韓国OTT市場全体の変化とも重なる。

かつては「見逃し配信」が価値だった。しかし現在は、「ここでしか見られない作品」が勝負を決める時代になった。

以前は地上波ドラマの見逃し配信だけでも利用者を集められたが、現在は独占IPや大型オリジナル作品が加入者獲得の鍵になっている。

Netflixは世界同時配信、Disney+は大型投資作品、TVINGは独自IPと、それぞれ強みを明確化。一方で、独自コンテンツを持てないプラットフォームは苦戦を強いられている。

Wavveは生き残りをかけ、TVINGとの合併を推進している。ただ、TVINGの第2株主であるKTの反対などもあり、協議は2年近く停滞しているとされる。

業界では、合併による制作費圧縮やマーケティング効率化を期待する声もある。ただ、統合が遅れるほど両社の相乗効果も小さくなるとの見方は少なくない。

■ Wavve危機は韓ドラ業界全体の課題か

韓ドラは今も世界的人気を維持している。しかしその裏側では、制作費高騰、OTT再編、話数短縮、独自IP競争という大きな変化が進んでいる。

Wavveの“オリジナルドラマ消滅危機”は、単なる1社の問題ではない。韓ドラ業界全体が、新たな生存競争へ突入したことを示す象徴的な出来事なのかもしれない。

 

WOW!Korea提供

2026.05.17