【コラム】“16部作”はもう古い?『ユミの細胞たち3』と『テプン商事』が映す韓ドラ新時代

「もう終わり?」

5日に最終回を迎えたTVINGオリジナル『ユミの細胞たち』シーズン3を見終えた視聴者からは、そんな声が相次いだ。

シーズン3は全8話。これまでのシーズン1、2が14部作だったことを考えると、半分近いボリュームとなる。テンポの良い展開や無駄のない構成を好意的に受け止める視聴者が多かった一方、「もっと見たかった」「ユミの人生をもっとじっくり描いてほしかった」という“物足りなさ”を訴える声も少なくなかった。

だが実は、この“短さへの寂しさ”こそ、いまの韓国ドラマ業界を象徴する現象なのかもしれない。

かつて韓国ドラマといえば、“16部作”は事実上の標準フォーマットだった。人気作ともなれば20話超えも珍しくなく、視聴率好調を理由に“放送延長”が行われるケースも多かった。さらに大河ドラマでは50話、100話超えも当たり前。視聴者は2か月以上にわたって作品と共に時間を過ごし、登場人物の人生に深く没入していた。

しかし現在、その“韓ドラ文法”は大きく変化している。

最近公開された『21世紀の大君夫人』『誰だって無価値な自分と闘っている』『秘密の監査 -Filing for Love-』なども12部作構成。さらにOTT作品では8話前後で完結するケースが急増している。

一方で、『おつかれさま』『ウンジュンとサンヨン』、そして『テプン商事』のように、いまや16部作であること自体が“珍しい作品”として語られる時代になった。

なぜ韓国ドラマは、ここまで短くなったのか。

その背景には、OTT時代による視聴習慣の変化がある。

Netflix、TVING、Disney+といったグローバルOTTプラットフォームが主流となり、“毎週放送を待つ文化”から、“一気見する文化”へと視聴スタイルそのものが変化した。かつてのように「来週まで待つ」ことを前提にした構成ではなく、“離脱されないテンポ”が重視される時代になったのだ。

さらにショート動画文化の拡大は、ドラマの演出そのものにも大きな変化をもたらした。

以前の韓国ドラマでは、感情を積み重ねるために同じ場面を何度も回想する“フラッシュバック演出”が定番だった。しかし現在では、そのテンポ感を“遅い”“くどい”と感じる視聴者も増えている。

実際、今回の韓国メディア報道でも、“ショート動画時代に入り、視聴者が繰り返される回想シーンを嫌うようになった”と分析されている。不要な説明を削ぎ落とした結果、ドラマそのものが短くなっていったというわけだ。

いわゆる“サイダー展開”が求められる時代になったとも言える。

かつては、主人公が何話にもわたって苦しみ続ける“高句麗(コグマ)展開”も韓ドラ特有の魅力として受け入れられていた。しかし現在の視聴者は、ストレス展開が長引くことを好まない。SNSでは放送直後からネタバレやクリップ動画が拡散され、視聴者は“最短距離で面白さに到達する作品”を求めるようになった。

また、映画とドラマの境界が曖昧になっていることも大きい。

韓国では近年、映画監督たちがOTTシリーズへ進出するケースが急増。しかし、2時間映画のテンポ感に慣れた演出家たちにとって、16話以上の長編ドラマを維持するのは簡単ではないという指摘もある。

つまり現在の韓ドラは、“長く見る作品”というより、“濃く見る作品”へと変化しているのだ。

ただし、それでも長編ドラマが完全に消えたわけではない。

韓国メディアでは、『おつかれさま』『テプン商事』『ウンジュンとサンヨン』などは、“時間をかけて人物や人生を積み上げる必要がある作品”だからこそ16部作になったと分析されている。

特に『テプン商事』のような作品は、人間関係や時代背景、登場人物たちの感情変化をじっくり積み重ねることで深みが生まれるタイプのドラマだ。短編では描き切れない“余白”や“積み重ね”が、作品の魅力そのものに直結する。

一方で、『ユミの細胞たち』シーズン3は、あえて8部作を選択したことが“成功戦略”だったという評価も出ている。

シーズン1、2がユミの人生を積み上げていく“成長の物語”だったとすれば、シーズン3はその物語を締めくくる“完結編”だった。長く続ければ、過去シーズンと似た葛藤や展開を繰り返してしまう危険性もある。だからこそ、必要な感情だけを凝縮し、短く鋭く走り切った今回の構成は、むしろ完成度を高めたという見方だ。

実際、『ユミの細胞たち』シーズン3は、“短いのが惜しい”という異例の好意的反応を引き出した。これは“短すぎる”という不満ではない。“もっと見ていたかった”という愛着の裏返しだ。

つまり、いま韓国ドラマに求められているのは、“長さ”ではなく“密度”なのかもしれない。

もちろん、長編だからこそ描ける感情もある。長い時間をかけて積み重ねる恋愛、人間関係、人生の変化には、短編では代替できない魅力がある。

だがその一方で、短いからこそ余韻を残す作品もある。

“16部作の終焉”は、韓国ドラマの衰退ではない。むしろOTT時代に合わせて、物語の形そのものが進化している途中なのだろう。

ユミの細胞たち シーズン3のプロフィール
ユミの細胞たち シーズン3のまとめ

 

WOW!Korea提供

2026.05.09