
かつて、スターが“戻る場所”はテレビだった。スキャンダルや活動休止を経た芸能人が、バラエティ番組やドラマを通じて再び視聴者と向き合う――そんな復帰の導線が当たり前のように存在していた。
しかし、その構造は今、大きく変わりつつある。いま韓国では、表舞台から遠ざかっていたスターたちが、相次いでTikTokライブへと流れている。そこはもはや単なる配信の場ではない。“復帰の場”として機能し始めている。
その象徴がパク・シフだ。約80万人を超えるフォロワーを抱え、配信のたびに多くの視聴者を集めるなど、TikTok内で確かな存在感を示している。一部では“5億ウォン(約5000万円)”の収益説も取り沙汰されたが、所属事務所はこれを否定。海外ファンとの交流を目的としたものだと説明している。だが結果的に、特別な企画や演出がなくとも、日常の会話だけで収益が生まれる構造は、従来の芸能活動とは一線を画す。
ハン・チェヨンとMCモンによるTikTokライブも象徴的な事例だ。神秘的なイメージで知られるハン・チェヨンと、過去の騒動で地上波から姿を消していたMCモン。これまでのテレビでは実現し得なかった“共演”が、TikTokでは当たり前のように成立する。リアルタイムで視聴者とやり取りを交わすライブ配信は、編集された映像とは異なる“素の魅力”を引き出し、新たなファンとの接点を生み出している。

なぜTikTokなのか。文化評論家ハ・ジェグンは「TikTokがグローバルプラットフォームとして影響力を拡大する中、芸能人もその大衆性を体感し、新たなコミュニケーションの場として活用している」と分析する。コメントや投げ銭といった双方向性の仕組みが、従来のメディアにはなかった“距離の近さ”と“収益性”を同時に実現している点は大きい。
さらに、利用者データもこの流れを裏付ける。データテック企業IGAWorksのモバイルインデックスによると、2025年のTikTokおよびTikTok Liteの月間アクティブユーザー数は、1月の約479万人から11月には約617万人へと増加。10か月で約28.7%伸びており、韓国でも主要プラットフォームとしての存在感を急速に高めている。
こうした成長を背景に、TikTokは韓国市場への投資を加速させている。2026年の「K-インパクトサミット」では、韓国のコンテンツエコシステムに5000万ドル(約76億円)以上を投資すると発表。クリエイター報酬の最大2倍拡大やインキュベーションプログラムの導入など、コンテンツ基盤の強化にも本腰を入れている。

その戦略はショート動画の枠を超えつつある。FIFAと連携した2026年北中米ワールドカップの舞台裏コンテンツ、KBOリーグやKリーグとの協業など、スポーツ領域にも進出。ニュースやエンターテインメントを含めた総合コンテンツプラットフォームへの進化を進めている。これは、スポーツ中継などの独自コンテンツを軸に成長してきたOTTサービスの戦略とも重なる動きだ。
もちろん、こうした拡張が韓国のコンテンツ市場にどこまで影響を与えるかについては、なお見方が分かれる。急成長を評価する声がある一方で、既存プラットフォームを凌ぐ主流になれるかは慎重に見極める必要があるという指摘もある。

それでも明らかなのは、TikTokが“ただのアプリ”ではなくなっているという事実だ。スターたちはそこに集まり、語り、再び評価される。そこには、かつてテレビが担っていた役割の一部が、確かに移り始めている。
そして今、復帰の場はもうテレビだけではない。
“戻る場所”は、自分でスイッチを入れられる時代になった。
WOW!Korea提供







