
※一部あらすじ・ネタバレになる内容が含まれています。
現実が不完全だからこそ、人は理想を思い描く。だが結局は、その不完全な現実の中で最善を見つけようとする。
そんな普遍的な感情を、これほどまでに巧みに描いた作品がある。Netflixシリーズ「マンスリー彼氏」だ。
「月額5万円で恋愛をサブスクする?」という問いは、もはや単なるジョークではない。恋愛すら“体験し、選ぶ”時代を描いた、いわば仮想恋愛シミュレーションだ。
現在Netflixで配信中の本作に登場するこのサービスは、かつては夢物語だったかもしれない。しかし、AIが日常に溶け込んだ現代においては、どこか現実味を帯びた誘惑として映る。
AIが描く“都合のいい恋愛”
「マンスリー彼氏」は、仕事に追われ恋愛から遠ざかっていたウェブトゥーンPDのミレ(「BLACKPINK」 JISOO)が、仮想恋愛サービスを通じて恋愛を“サブスク”する物語だ。
デバイスを装着すれば、ソ・ガンジュン、イ・スヒョクをはじめ、オン・ソンウ、イ・ジェウク、イ・ヒョヌク、キム・ヨンデ、パク・ジェボム、イ・サンイら多彩な男性キャラクターが“恋人”として登場する。
初恋のようなときめきから、ロマンチックなシチュエーションまで、あらゆる理想の恋愛が再現される。
仮想世界では、思いのままに愛し、愛される。現実の恋愛で感じるときめきやすれ違い、さらにはケンカと仲直りまでもが細かく設計されている。


特筆すべきは、そのリアリティだ。
このサービスは“サブスク”の論理に基づき、より現実に近い設定ほど価格が高くなる。基本料金は月額50万ウォン(約5万円)で、900通りのデート選択肢が用意されているが、プレミアム機能を追加すれば、通勤中のメッセージや電話といった細やかなコミュニケーションまで再現される。
つまり、“感情の面倒な部分”をそぎ落とし、“恋愛の満足感だけ”を抽出したサービスなのだ。
AIが悪ではない理由
本作が興味深いのは、AIを“悪”として描いていない点だ。
脚本のナムグン・ドヨンは、AIそのものではなく「未来への不安」こそが本当の敵だと語る。
実際、主人公ミレは過去の恋愛の傷から、新たな恋に踏み出すことを恐れている。その恐れこそが、彼女を縛る最大の要因となっている。
AIはあくまで鏡だ。
ユーザーの好みを分析し、理想の恋愛を提示する一方で、“自分でも気づかなかった欲望”や“最も恐れているもの”を浮かび上がらせる。
その象徴が、ソ・イングクが演じるク・ヨンイルだ。
彼はミレの理想を体現する存在でありながら、同時に彼女が避けてきた現実と向き合うきっかけとなる人物でもある。ソ・イングクはこの難しい役どころを、繊細さと包容力を併せ持つ演技で見事に表現し、物語の説得力を一段と引き上げている。
物語は終盤、2人の対話を通じて“恐れを乗り越えた先の愛”へと収束していく。

一方で、本作のもう一つの話題はJISOOの演技だ。
これまでたびたび議論の対象となってきた演技力について、今回も評価は分かれた。
一部では物足りなさを指摘する声が上がる一方で、前作よりも改善された、キャラクターの不器用さをうまく表現しているといった肯定的な意見も少なくない。
特に海外メディアの評価は高く、米TIME誌は「これまでで最も適した役」と評し、Deciderも作品の独自性を称賛した。
そして何より、本作でのJISOOは“完璧ではない主人公”を演じることで、むしろ作品にリアリティをもたらしている。不安や迷いを抱えながらも前に進もうとする姿は、多くの視聴者の共感を呼び、物語の中心として確かな存在感を示した。
その中で安定感を見せたのがソ・イングクだ。
現実世界の同僚と仮想世界の恋人という1人2役を自然に演じ分け、物語の軸をしっかりと支えた。その存在は、作品全体のバランスを整える“核”として、物語を力強く支えている。


さらに、豪華カメオ陣の存在も大きい。
それぞれ異なる魅力でJISOOとのケミストリーを見せ、作品に彩りを加えると同時に、主人公にかかる負担をうまく和らげている。
とりわけソ・ガンジュンは圧倒的なビジュアルと存在感で強い印象を残し、“理想の彼氏像”として視聴者の支持を集めた。
なぜ人は“作られた恋愛”に惹かれるのか
本作は単なるロマンティックコメディにとどまらない。
多様な人間像と恋愛の形を描きながら、最終的に問いかけるのは“本当の愛とは何か”というテーマだ。
AIでは埋められないもの――
それは、不完全だからこそ生まれる温かさであり、相手と向き合うことでしか得られない感情だ。
作品は、他者を理解する前に“自分自身と向き合うこと”の重要性を示している。
そして問いは、視聴者に委ねられる。
「あなたは、どんな愛を選びますか?」
「マンスリー彼氏」は現在Netflixで配信中。
WOW!Korea提供








