『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』でコン・ユが扮した主人公のキム・シンは、高麗時代から900年以上も生き続けている人物だった。しかも、胸に剣が刺さったままなのだ。奇怪な設定で一歩間違えるとキワモノ扱いされそうだが、コン・ユの存在感があったからこそ、『トッケビ』は重厚なファンタジー作品になっていた。
人間はどう生きるのか
『トッケビ』が描く世界は変わりすぎている。
人間が900年以上も生きているし、ドアを一歩出れば地球の反対側になってしまう。しかも、特定の人に見える幽霊や魔術的な死神まで現れ、空想と現実が行ったり来たりしている。
そういう展開になったのには理由がある。「生」と「死」が交差する世界で人間はどう生きるか、ということがテーマになっているからだ。
印象的なセリフがある。
「人間は生まれ変わって四度の人生を経験する。一度目は種を植え、二度目は水をやり、三度目に収穫して、四度目に食べる……」
このセリフも、輪廻転生を繰り返しながら人間が何かを悟っていく過程を暗示しているかのようだ。
もちろん、中心に位置していたのは、900年以上も生きるキム・シンだ。この主人公を演じたコン・ユは、何を心掛けていたのだろうか。
コン・ユはこう語っている。
「キム・シンという人物が持つ歴史と生い立ちが、『トッケビ』というドラマにおいてとても重要なポイントになっていたと思います。キム・シンが心の奥底に抱えている寂しさ、哀しみ、真実性……それを持ったまま生きた彼の人生と歴史が視聴者を納得させる役割を果たしたのではないでしょうか」
「現代の場面において、トッケビとして生きているキム・シンが口走る時代劇トーンのセリフが、彼自身のキャラクターにおける一つの武器になっていたようです。そこがまた、私にとっても演技のポイントでしたね」
「時代劇のシーンは私の課題だったので、監督ともたくさん話し合い、いろいろ悩みました。現場では努力が無駄にならないように懸命に努めましたし、結果的に演技に満足しています」
900年以上も生きる人物を演じるというのは、ほとんど誰もやったことがない。大きな困難をともなうものだが、コン・ユは「本当にこういう人がいそうだ」と視聴者を納得させる演技を見せていた。
奇怪な設定でありながら『トッケビ』が最後まで一途に物語を真摯に貫くことができたのは、コン・ユに時空を越えた演技力があったからに違いない。
構成=「ロコレ」編集部
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