『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』にはとても好きな名場面が多いのだが、その一つが第5話でジアン(IU)が祖母のハルモニを連れて月を見に行くシーンだ。何度見ても心が温かくなる場面だ。
彼はいい人?
ジアンが住んでいるのはタルトンネだ。タルトンネとは「月の町」という意味だが、ソウルでは貧しい人たちが住むところとして知られる。
朝鮮戦争の時に家を失った人たちが丘の上に重なってバラックを作り始めたのがタルトンネの由来であり、それ以降も「貧しい町の象徴」となっていた。
まだ練炭がソウルでも重要な暖房になっていた時、坂道の上にあるタルトンネでは練炭を運ぶのも大変だった。それをはじめとしてやはりタルトンネには「住みにくい」というイメージがつきまとう。
ジアンが住むアパートも、物語の舞台になっている後渓(フゲ)の中で坂道を登っていったタルトンネだ。ドンフン(イ・ソンギュン)が住む地域とは違う。
あるとき、ジアンはハルモニをスーパーマーケットのカートに乗せてさらに坂道を上に登っていった。そこは月がとても綺麗に見える場所だったのである。
坂道の途中でジアンはドンフンに会っている。そこでハルモニは月を見ながらジアンに対して「あの人、いい人でしょ?」と質問する。
ジアンは、最初は何も答えなかった。
しかし、ハルモニが再び尋ねたのでジアンはようやく口を開いた。
「いい暮らしをしていると、いい人になるのが簡単なのよ」
この言葉の意味は深かった。なによりも、ジアンがドンフンのことを「いい人」と認識していることが端的にわかる場面であった。
ジアンの中で確実に、ドンフンへの見方が変わり始めていた。
【『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』ドラマ概要】
放送局/tvN
放送年/2018年
全話数/16
演出/キム・ウォンソク
脚本/パク・ヘヨン
出演者(役名)/イ・ソンギュン(パク・ドンフン)、IU(イ・ジアン)、パク・ホサン(パク・サンフン)、ソン・セビョク(パク・ギフン)
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
コラム:ロコレ提供 http://syukakusha.com/
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