「コラム」康熙奉の「韓国に行きたい紀行」済州島12/船内の光景

船の甲板

 

私は、安らげる居場所を求めて大部屋の間をウロチョロした。すでに客室では、あちこちで花札が始まっていた。各人が目の前に紙幣を積んでいる雰囲気はまるで賭場のようであり、その紙幣も千ウォン札より1万ウォン札が目についた。誰もが旅行気分に浮かれている。

 

とてつもない解放感
韓国人は花札が好き。「覚えるのが簡単」「どこでも気軽にできる」「勝負が早く決着する」「何人でも参加できる」という利点が、せっかちで群れたがる韓国人の性格に合っている。実際、韓国を旅していると、花札に興じている人たちをどこでも見かける。一番目にするのが市場。山盛りに並べた野菜の奥には、大声を出したながら花札に興じる年配女性たちがいる。


それにしても、この船内の盛り上がりはハンパじゃない。二等船室は隅から隅まで花札に興じる人ばかり。凄まじい熱気がこちらまで伝わってくる。
私も、ジッとしていられない。もともと賭け事が嫌いなほうじゃないので(というより大好きなので)、客室を何度も回った。最初はトランプをしていた修学旅行の中学生も、いつのまにか花札を始めていた。さすがに現金は賭けていなかったけれど。
花札もいいのだが、ただ指をくわえて見ているだけ、というのもしゃくにさわる。寝ころがろうという当初の目的をあきらめて、私はデッキに出た。

見渡すかぎりの海。とてつもない解放感。これだから船旅はいい。狭い座席におしこめられる飛行機とは大違いだ。寝てもいいし、車座になって酒を飲んでもいいし、乗船から下船まで花札三昧で過ごすのもいい。手足を思う存分に伸ばしたまま目的地に行けるのだからたまらない。
気分よくデッキを歩いていると、なぜかよく話しかけられた。最初は、動画を撮影していた人が、「この使い方、わかりますか?」と言う。「ちょっとわかりません」と首を振ったら、相手は大げさに肩をすくめて立ち去っていった。


次に、60代の男性から「この船の料金はいくらですか?」と聞かれた。「すでに乗っているのだから、あなたも知っているのでは」と言ったら、「いや、私はちょっと事情があって……」とうつむいてしまった。
一体どんな事情があるのだろうか。
(次回に続く)

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

 

康熙奉の「韓国に行きたい紀行」済州島1/韓国の最南端

康熙奉の「韓国に行きたい紀行」済州島2/アワビの刺身

康熙奉の「韓国に行きたい紀行」済州島11/船で莞島に向かう

コラム提供:ロコレ

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2022.09.14