「コラム」日本と韓国の物語「第10回/布施辰治(前編)」

社会的弱者の弁護に熱心だった布施辰治

 

宮城県石巻市の蛇田地区。「あけぼの南公園」という小さな公園がある。そこを訪ねたのは2009年12月のことだった。私は公園の端にあった横長の顕彰碑に近づき、ずっと見ていた。

 

真似ができない生き方
顕彰碑の中央部分には次の言葉が刻まれていた。

生きべくんば

民衆と

ともに

死すべくんば

民衆の

ために

この言葉を何度か心の中で反芻してみた。
時代がかった壮語にも思える。この言葉を口に出しても周囲に納得してもらえる人が、今の世の中にどれほどいるだろうか。
民衆のために生き、民衆のために死ぬ覚悟……。「真似ができない生き方」の究極であるに違いない。
先の言葉を座右の銘にしたのは、この地に生まれ育った布施辰治である。顕彰碑は彼の業績を讃えるために、1993年11月13日に建立された。その日は、布施辰治の113年目の誕生日に当たる。
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2021.12.13