「コラム」日本と韓国の物語「第10回/布施辰治(前編)」

 

逆風に立ち向かう獅子
よほど有能だったのだろう。弁護依頼が殺到し、1918年には1年間に担当した件数が、判決が下った刑事事件だけでも190件にのぼった。超人としか言いようがないほどの活躍ぶりだ。
布施辰治は特に、社会的弱者の弁護に熱心だった。


いくつもの労働争議や社会運動弾圧法廷で辣腕をふるった他、普通選挙実現や公娼廃止などに向けた運動も活発に行なった。
特に、差別される人たちに同情し、1919年からは、「三・一独立運動」に関連した容疑で東京で逮捕された留学生など朝鮮半島出身者たちの弁護を数多く担当するようになった。
彼はもともと、1910年に強行された日韓併合を「資本主義的で帝国主義の侵略であった」と憤怒していた。
それだけに、朝鮮民族の独立運動に対して共感を示し、自らもその運動を支えたいという強い意識を持っていた。

なぜ、布施辰治はそれほどまでに朝鮮半島の人たちを救いたいと思ったのか。それは、彼が「虐げられている者こそが最も救われるべきだ」という信仰を持っていたからに他ならない。
人権意識が薄い時代の困難さは、現代からは想像すらできない。そんな時代に自らの信念に生きた布施辰治は、まさに「逆風に立ち向かう獅子」を思わせる。
(後編に続く)

文=康 熙奉(カン ヒボン)

 

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コラム提供:ヨブル

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2021.12.13