魂を揺さぶる天使の歌声で、数多くのミュージカル作品を通じて、観客を感動させてきたミュージカル界の皇太子イム・テギョン。
2005年、韓国ミュージカル「炎の剣」で主役デビューを果たし、2006年には日本で韓国ミュージカル「冬のソナタ」のカン・ジュンサン役を演じ、日本でも話題を呼んだ。その後、韓国で「ハムレット」「ロミオとジュリエット」「モーツァルト!」「皇太子ルドルフ」「モンテクリスト伯」「ウェルテルの恋」などに出演し、ミュージカル界では「歌唱力No.1」、「Heaven’s voice」の異名を持つほどの実力者であり、美声の持ち主として、今なお韓国で注目を浴びているトップ俳優だ。
そんな彼の待望の日本デビューアルバム「All This Time~時を経て~」が3月5日にリリース。日韓同時発売となる今回のアルバム発売を記念し、3月26日と27日、都内にてCD購入者を対象にしたスペシャルイベントを開催するため来日したイム・テギョンがイベント直前、単独インタビューに応じてくれた。
インタビュールームに入ってきたイム・テギョンとあいさつを交わし、インタビュー取材をさせていただくのは今回で2度目だと告げると、「覚えていますよ!」と気さくな笑顔を見せたイム・テギョン。優しく穏やかな声のトーンで、日本デビューアルバムやミュージカルについて、率直な想いをたっぷり語ってくれた。
Qアルバム「All This Time~時を経て~」には6曲が収録されていますが、数多くの曲の中からこの6曲を選曲した理由を教えてください。
僕はミュージカル俳優であり、クロスオーバー歌手ですが、このアルバムを聴いたとき、そういう説明がなくても、僕がミュージカル俳優で、クロスオーバー歌手だと思われるような曲を厳選しました。
Q今回はプロデュースも手掛けたそうですね。大変だった点はありますか?
人というのは、満足するということが難しいじゃないですか。もっとうまくやりたいし、カッコよくやりたいという欲が出ますよね。だからといって、これも気に入らない、あれも気に入らない、と自分の主張ばかりしているとアルバムを作れないので、スタッフと相談しながら、欲を出し過ぎず、そのバランスを取るのが大変でした。でも、プロデュース作業は楽しかったですね。
Qタイトル曲「All This Time」(ミュージカル「モンテクリスト伯」より)はミュージカルでは、女性のソロ曲でした。これをタイトル曲にしようと思ったのはどうしてですか?
「モンテクリスト伯」に出てくる曲の中で、一番気に入った曲だったので。例えば、街を歩いていて、一目惚れすることがあるじゃないですか。性格や声も分からないのに、初めて見た瞬間に好きになるという。この曲がそうだったんです。聴いた瞬間に、いいなと。それに、以前から僕を好きで、長い間待ってくれていた日本のファンの皆さんに対する僕の気持ちが、「All This Time」という曲名ともマッチしていたので、この曲をタイトル曲にしました。
Qアルバムの収録曲の中で、一番思い入れの強い曲を挙げるとしたら?
難しいですね。すべて思い入れがあって好きなので。ドラマチックで壮大な曲はそのまま雰囲気を出したし、語りかけるような、囁いているような曲は、そういう感じを生かしたので、すべての曲に愛情を持っています。6曲しか収録されていませんが、それぞれカラーが違うので、七色の虹のような構成になっていると思います。
Qミュージカルの劇中で歌うのと、レコーディングスタジオで歌うのとでは、感じが違うと思いますが。
ミュージカルの舞台では、1回限りで終わってしまうので、思い切り感情を込めても大丈夫なんです。むしろ、そのほうがインパクトがあります。でも、レコーディングのとき、舞台と同じように感情を入れてしまうと、繰り返し聴くことができなくなります。何度か聴くと飽きてしまうんですよね。なので、過剰に感情を入れないように、淡々とレコーディングするようにしました。
Q韓国では昨年9月のソウルを皮切りに、現在もコンサートツアーを展開中ですね。
以前から、番組で2、3曲披露するだけでは物足りないから、コンサートをやってほしいというファンの方からのリクエストが多かったんです。でもコンサートは、簡単にできることではないので、今までツアーという考えはなかったんですが、「不朽の名曲」という番組を通じて、より多くの方に知られるようになったので、韓国各地を回りながら、公演をしてみようと思いました。ソウルを皮切りに、在米韓国人の多い米国・ロサンゼルス、サンフランシスコにも行き、4月19日にまたソウルに戻ってフィナーレを迎えます。長期間にわたる公演ですが、すごく幸せですね。多くの方が客席を埋めてくださったし、地域ごとに観客の反応が違うんですよ。情熱的に応援してくれる地域もあったし、静かに鑑賞する地域もあったし。長期間だったので、途中でレパートリー、プログラムも変えたりしました。でも、一番思い出に残っているのは、いろいろな都市を回っているのに、行く先々で同じ顔が見えるんですよ(笑)。たぶん、ファンの方は僕のおかげで、米国にも行けたし、韓国各地も回れたし、たぶん今回も日本まで付いてきた方がいらっしゃるんじゃないかな(笑)。なんだか、同伴者ができたような感じで、幸せです。
Q米国での観客の反応はいかがでしたか?
とてもよかったです。実は最初は心配していたんですよ。在米韓国人だけでなく、地元の方が見に来ないと席が埋まらないのに、50人くらいしか来なかったらどうしようと。でも、おかげさまでチケットも完売し、満席となって。中には、僕の名前を書いたプラカードを持って、ホテルの前で待っていたファンの方もいて、“僕のことを知っている米国人がいるんだ”と思って、すごく不思議な気分になりましたね。
Q今回のツアーは長丁場でもあり、また今の時期は季節の変わり目で体調を崩しやすいですが、健康管理はどのようにされていますか?
1日中、気を遣っていますね。特に、喉の状態をベストに保つため、胃酸の調整は欠かせないです。そのため、夜の食事は、寝る3時間前までに済ませますね。食事をして、食べた物が消化されていないのにすぐ寝てしまうと、寝ている間に胃酸が逆流して上がってくるので、その酸によって声帯が傷ついてしまうんですよ。だから、皆さんも朝起きて、喉が詰まっていると感じることがあると思うんですが、それは胃酸の逆流のせい。でも、ちゃんと管理をすれば、朝起きてからすぐでも、歌は歌えるんですよ(笑)。
Qイム・テギョンさんはミュージカル「冬のソナタ」を通じて、日本で「Kミュージカル」という新たなジャンルを開拓したパイオニア的存在ですが、それについてはどのように感じていますか?
そう言っていただけると嬉しい反面、気恥ずかしいですね。でも、僕が韓国ミュージカルを紹介したというより、日本の方が楽しめる新たなものが一つ増えた、ということに幸せを感じています。と同時に責任感も感じているので、パイオニアも重要ですが、それ以上にフォローアップも重要だと思うので、さらにより多くの方に楽しんでもらえる、愛されるミュージカルが日本で上演されるよう、一生懸命頑張っていきたいですね。
Q今後挑戦したいミュージカルはありますか?
以前、オファーがあったとき、もう少し年齢を重ね、キャリアを積んでからの方がいいなと思い、当時は断った作品がいくつかあるんですよ。でも、そろそろやってもいい頃かなと思っている作品があって、その一つが「ジキル&ハイド」ですね。
Qイム・テギョンさんにとって、ミュージカルとは?
ワケも分からず足を踏み入れたら、ハマってしまって出られない沼のようなもの!? 麻薬みたいな(笑)。たぶん、僕が辞めると言っても、制作側がそうはさせてくれないでしょうね(笑)。
Q今後、日本ではどのように活動していきたいと思っていますか?
インタビューを通じてだったり、ショーケースだったり、イム・テギョンというアーティストが存在するということを多くの方に知ってもらい、ファンの皆さんとはコンサートで会いたいです。そもそも、日本で活動をするようになったのは、他のアーティストの方と一緒に日本で公演をしたとき、2曲しか歌っていないのに、その姿を好意的に見てくださり、日本のファンの方たちが何度も韓国まで公演を見に来てくださったことへの感謝から、今度は僕が皆さんの元へ行って、歌を聴かせたいと思ったからなんです。なので、近くで僕の歌を届けることができる場をたくさん作っていけたらいいなと思っています。
現状に満足することなく、新たな作品に挑戦し、さらなる高みを目指す一方で、日本で「Kミュージカル」というジャンルを開拓したパイオニアとしての責任を胸に、日本でもKミュージカルの普及に努めたいと語ったイム・テギョン。独自の哲学を持ち、ミュージカル俳優として、クロスオーバー歌手として、世界中の多くのファンを魅了しながら、今後も飛躍し続けていくことだろう。
イム・テギョン日本公式サイト http://im-taekyung.jp/
イム・テギョン テイチク オフィシャルサイト http://www.teichiku.co.jp/artist/im-tae-kyun