<Wコラム>BoAに見る音楽カルチャー20年の変化

「変化と進化」
BoAの歩みは、未知へのチャレンジの連続だ。『LISTEN TO MY HEART』のミリオンセラーに続き、「DO THE MOTION」(2005)は、オリコン週間シングルランキングでトップを獲得した。NHK「紅白歌合戦」には2002年から6年連続出演し、日本レコード大賞、日本ゴールデンディスク大賞など、数々の賞にも輝いた。

2000年代後半には「BIGBANG」や「SUPER JUNIOR」をはじめ、韓国のアーティストが次々と日本に上陸。韓国の音楽はK-POPと呼ばれるようになる。2010年代前半には「KARA」や「少女時代」などガールズグループも幅広い世代に人気を博し、K-POPは日本を席巻するブームとなった。アリーナツアーやドームツアー。どんどん大きくなるステージに立つ韓国のアーティストと日本のファンの熱狂を取材する一方で、わたしの目を引いたのは、独自の道を進むBoAのチャレンジだった。

BoAがターゲットにしたのは、アメリカだった。2009年には全米デビューアルバム『BoA』をリリースし、Billboard200で127位に。同チャートに韓国の歌手がランクインしたのは、BoAが初めてだった。アメリカは、アーティストも交えてスタッフが話し合うスタイル。アメリカ音楽業界に身を投じたBoAは、セルフプロデュースを志すようになる。2012年には、「Only One」を作詞作曲。ミディアムテンポのR&Bに、ボーカルを前面に出した「リリカルヒップポップ」を試みる。翌年リリースした『Kiss My Lips』(2013)では12曲すべてを作詞・作曲・プロデュースで参加。それは、アイドルから、自らの声を発信するシンガーソングライターへと脱皮した瞬間だった。

「唯一無二」
いまやアメリカをはじめ、世界中から注目を浴びるK-POP。韓国発の音楽は、この20年で飛躍的な成長を遂げた。そんななか、BoAはセルフプロデュースした「スキだよ -MY LOVE-」(2019)やアプリゲームのテーマソングとなった「I believe」(2020)を日本でリリース。韓国でも「NEGA DOLA」(2018)では本格的なヒップホップに挑戦し、「Woman」(2018)では逆立ちパフォーマンスを披露するなど、一作ごとに変化と進化を遂げながら、新たな境地を切り開き続けている。

「この仕事は過程よりは結果が重要視されます。本当に歌手になりたければ、身を粉にして努力しなければなりません。 実力は裏切らない。人気は泡のようなものだと言う人がいますが、実力はその泡を育てる水のような存在です」
2017年、国民プロデューサーを務めたオーディション番組「PRODUCE 101 シーズン2」で、デビューを目指す練習生たちにBoAが話した言葉だ。心に響くのは、BoAだから。前人未踏の地を進み続ける存在であるがゆえの説得力だ。

日本デビューから20年。自分ができる音楽を発信しながら、自分のフィールドで闘う。だが、「BoA JP 20th -THE PROLOGUE-」で笑顔で語る未来は、力むことなく軽やかだ。「なんか面白いことをやりたい。何か面白いことないかな」。彼女の心に浮かぶ、唯一無二の「なんか」。そんな底知れぬ好奇心こそが、BoAをBoAたらしめる所以かもしれない。コロナ禍で来日が叶わず「こんなに長く日本に行っていないのは初めて。早く行きたい」というBoA。再び日本のステージで輝く姿を見る日が待ち遠しい。

WOW!Korea提供

2021.07.15