● 企画意図
文化は流行だ。流行は代わってゆく。
オーペラが流行していた時代に新しく登場した軽い音楽の舞台は、観客の人々にはかなり馴染まないものであっただろう。
また、神が全てであった時代に人間を中心に考えるということは、それを考える事自体が非難の対象にもなっただろう。
馬が最速で最も便利な移動手段であった時代に出てきた車を、当時のある学者は、車は馬の役割の極一部の補助的な手段に過ぎないと予測したそうだとか。
今は当たり前だが、そうでない時代もあったのだ。ミュージカルもルネサンスも車も。
今回の作品には2つの試みが潜まれている。
その一つは、今の時代のショービジネスを大きく二分化しているミュージカルとアイドルを一つの舞台にしようとしたのだ。別の畑とされてきたその二つが溶け込んで混ぜられ合う。その試みはぎこちない所もあるかも知れないが、コロンブスの卵のように新しいジャンル、新しい道を広げてくれると信じている。
もう一つは、韓国のオリジナル・ミュージカルの世界初演を日本語で、そして東京で行う事だ。ここには、世界を舞台にして動くための日本と韓国の真となる文化交流の意味があり、それこそが日本がそして韓国が持っているお互いの文化的欠点の補完の作用をする事を期待している。
文化は流行り、衝突し、代わりゆく。その切れ目の真の中心部にこの作品がある。
● 作家の弁
STAGE(舞台)の上のPlayer(演者)の情熱は、客席に伝わり、感動を、また喜びを生み出す。それはまたエネルギに代わる。STAGEの上に立つPlayerは舞台を見るだけで胸が躍るのだ。その胸の躍りがplayになり、情熱になり、客席へと伝わる。その情熱が客席へ移動する瞬間のエネルギの動きが目に見えるとどんな形になるのだろう、といつも思う。STAGEの上で情熱を発する人は、STAGEを見るだけで胸が躍る人は、STAGEの上に立たなければならない。その胸の踊りが情熱に、感動に、エネルギに代わるからだ。まあ、簡単に言えても難しかったりする話だ。人生はそういう風に滑稽に動くのさ。
小学校に入る前の記憶。休日の前日の新聞には休日のテレビ番組表が載っていた。休日のテレビ番組表が載っている事を想像するだけで胸が躍った。昔、テレビ以外の娯楽というのがあまり無い時代だ。少年は新聞を開く。ドキドキする。朝の6時代の番組の中で一番観たい番組に丸をつける。今考えると朝6時なのでそんなに面白い番組をしていたとは思えない。何か動物の番組だったのかな。記憶に無い。7時代、8時代、9時代。順番にチェックしていた少年は10時代の前で戸惑う。見たい番組が三つもあるのさ。どうしよう。どうしよう。
あなたの胸は、今、躍っていますか?
● 主要スタッフ・プロフィール
作曲・編曲・音楽監督 キムテフン プロフィール
韓国ソウル出身。1994年韓国メジャーデビュー。2010年から日本で主に活動。
歌手。作曲家。音楽プロデューサー。ボーカルトレーナー。
数多くのテレビドラマや映画のOST、多数のソロアルバム発表。
* 歌手
「ボゴシプダ(会いたい)」という曲で有名なキム・ボムスがリメイクした「LovingU」、オム・テウンとハン・ジミン主演のドラマ「復活」の主題曲「無罪」や「独白」他、「ソポ(小包)」、「サランへ(愛してる)」、「朝(ASA)」などのヒット曲多数で、2021年3月、ソロデジタルアルバム「PROMISE」を発表して活発に活動中。
* ボーカルトレーナー
F.T.Islandのイ・ホンギのボーカルトレーナーをはじめ多数のKPOP歌手のボーカル講師や韓国の音楽大学でのボーカル講師を歴任。平尾昌晃ミュージックスクール、YGエンターテインメントジャパンでのボーカル講師をも歴任。教え子のMASHIHO、ASAHI、YOSHI、HARUTOの4人をYGトレージャーボックス(YG Treasure Box)に合格させるなどの多数の実績を持つ。
* 作曲家・音楽監督
1996年から映画音楽家シン・ビョンハ先生の下で映画音楽の作曲・編曲を教わり、2002年から映画「モンジョンギ」、「ダリョ」、「ドリョチャギ」など多数の映画とドラマ・舞台の音楽の作曲・編曲・音楽監督を歴任。
オーストラリア・シドニー生まれ。香港、東京育ち。青山学院高等部卒業、日本大学芸術学部音楽学科 作曲コース卒業、 日本大学大学院芸術学研究科 音楽芸術(作曲)専攻修士課程修了。大学ではクラシックや現代音楽の作曲法を学びながら、ミュージカル研究会に所属し、オリジナル・ミュージカル作品の作編曲をする。 卒業後も、舞台や映像作品の音楽、TV・ラジオ・ゲームアプリのBGMやSE、ポップス、クラシック等、多方面で作編曲活動を行っている。国際ピアノデュオ作曲コンクール入賞、他多数受賞。 2016年、作詞・作曲した楽曲が環境省ソングコンテストにおいて水・大気環境局長賞を受賞し、名水百選PRムービーに使用された。2018年には人気ゲーム 『ペルソナ』シリーズのショーイベントで使用される、ラップ・ミュージカルの作曲および編曲を担当した。作曲編曲した舞台作品に『不思議なラヴ・ストーリー』(ミュージカル座/2019)、ミュージカル「そうだってさ」など多数。
【Twitter】https://twitter.com/marimoderato
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